子どものかんしゃく「なぜ」「どうして」の理解:Part 1
2歳ごろの子どものかんしゃくの謎を解く
お子さんのかんしゃくに困ったことはありませんか?あの叫び声や暴れっぷりには、どんなに冷静なあなたも疲れ果て、イライラしてしまいますよね。しかしこうした感情の爆発には、思いがけない理由が隠れていることがよくあります。
概要
この記事では、その謎に迫り、かんしゃくにどう向き合うべきかを詳しく掘り下げます。この記事を読むことで、以下のことがわかります:
2歳前後の子供が癇癪を起こす原因は何か?
子供の視点から「かんしゃく」を経験する。
あなたの子供はどのようなサポートを必要としているか?
かんしゃくに対処する際の一般的な誤解。
しつけの究極の目標は何か?
この記事を通じて、育児をより楽しみ深いものにするお手伝いができれば幸いです。
幼児のかんしゃくは「わがまま」ではない
かんしゃくにはさまざまなきっかけがありますが、幼児に関しては、自分の思い通りにするためや、親の注意を引くためにかんしゃくを起こすわけではありません。幼児、特に2歳未満の幼児は、意志を持って反抗できるほど認知が成熟していません。彼らのかんしゃくは、何か困難なこと、怖いこと、不快なことに遭遇したときに現れる、本能的な反応のようなものなのです。
大人の勘違い
ですから、あなたをコントロールするため、気を引くためにわざとやっているわけではありません。
私たち大人は、幼い子どもでも適切なしつけや教育によって感情をコントロールできるようになると誤解しがちです。しかし、彼らの脳はまだそのレベルに達していません。幼児の認知の世界には、欲求、欲求不満、恐怖、興奮など様々な感情があふれかえっているにも関わらず、自分の感情を適切に表現する言語能力も、私たちが当たり前のように持っている感情コントロールの能力も、まだ発達していないのです。
子どもの立場になってみよう
幼い子どもたちがどのような世界で生きているのか、ちょっと体験してみましょう。
ある朝、あなたは、見知らぬ土地で目が覚め、自分よりもはるかに大きな巨人たちに囲まれていたとします。そしてお腹がぺこぺこです。何か食べたいのですが、どう頼んだらいいのかわかりません。身振り手振りで要求を伝えようとしても、まったくわかってもらえず、誰もいなくなってしまいました。恐怖、不安、空腹という強烈な負の感情に圧倒され、大声で泣くしかないのです。これが幼児の気持ちです。
子供のかんしゃくは「助けてー」の叫び
私たち大人にとってはいつもの環境や刺激でも、幼児にとっては未知の世界での生まれて初めての体験ですから、恐怖や不安で圧倒されてしまうこともあるということがお分かりいただけると思います。そう考えると、子どものかんしゃくは、あなたを困らせようとするわがままな行為ではなく、子どものあなたに助けを求める叫びと捉えることができるのではないでしょうか。
かんしゃくを起こしている子供がして欲しいこと
子供の世界
もう一度、子供の視点になって考えてみましょう。
あなたにとってこの世界の全てが生まれて初めて見るものです。何か新しいものを発見するたびに、驚きや喜びでワクワクして触って探索に夢中になっていました。すると突然、大きな怖い音がして、探索中のものをすべて奪われ、よくわからない場所に連れて行かれてしまいました。あなたはどう感じるでしょうか?びっくりして、恐怖と不安で叫び声をあげるかもしれません。
恐怖から逃げようと暴れるあなたを、巨人は怖い声で叱り、圧倒的な力で持ち上げ、暗闇の部屋に一人閉じ込められてしまいました。あなたはもっと恐ろしくなり、全身全霊で泣き叫ぶかもしれません。これが幼児のかんしゃくです。
大人の世界
実は、就寝時間になったので、子供に 「もう寝る時間だから遊ぶのをやめなさい!」と言い、おもちゃを手早く片付け、あなたをベッドに誘導しただけだったのでした。
ますます泣き声が大きくなるあなたに、大人はちょっとイライラしながら言い聞かせます。そして
「かんしゃくには無視が一番。あやすともっとひどくなるから」
「かんしゃくにはタイムアウトで、泣き止むまで放置でOK」
というアドバイス通りに、泣きわめくあなたをベッドに寝かせると、そのまま無言で部屋を出て行ってしまったのです。
子供の認知の世界
しかし、子供にとっては、「見知らぬ世界で、初めて見るものを探索していると、突然それらを全て奪われ、怖い声を浴びせられ、真っ暗な空間に移動させられ、閉じ込められ、恐怖に震え、全身全霊で助けを求めるのに、誰も助けてくれない」という経験がこの世界の全てとして認識されています。それは非常に恐ろしい世界であり、また、非情な人々だと感じることでしょう。
どんな対応をして欲しかったですか?
あなたがこの子だったら、どのような対応をして欲しかったですか?
たとえ言葉を十分に理解できなかったとしても、優しい口調と優しい笑顔で、ゆっくりと対応してくれれば、恐れは軽減されていたでしょう。自分の気持ちを理解してくれて、優しく抱きしめてくれたり、なぐさめてくれていたら、気持ちを落ち着かせることができたかもしれません。
無視されたら?
こんなに「助けて!」と力強く訴えているのに、全く聞いてもらえず、怖い空間にひとりぼっちなのですから、恐怖に圧倒されてしまいます。そのうち疲れて、いつの間にか眠ってしまうかもしれません。
この方法を毎晩繰り返すことで、泣かずに眠りにつけるようになりました。
親は「やっと克服できた。成長したな!」と感じ、安心します。
泣かなければそれでいいのか?
しかし泣かなければ、本当に成長したと言えるでしょうか?
中には本当に克服できた子もいるでしょう。
しかし泣いても無視されることが多い子どもは、感情を押し殺す癖や自分の強い感情を見てみないふりをする癖がついているだけかもしれません。これは健全な成長とは言えません。
「つらい時は泣いてもいいんだよ」
一番大切なのは、子どもの情緒の発達のために、安心できる愛情に満ちた土台を構築することです。
つまり、子供が感じている恐怖などの感情をそのまま受け入れ、理解してあげることで、子供は安心感を得ることができます。気持ちが落ち着いていれば、かんしゃくを起こす必要性が少なくなります。
安心できる愛情に満ちた土台とは、子供が感情を押し殺す必要がなく、どんなネガティブな感情であってもそれを表出することが許される、大人との愛情深い関係性のことです。子供が感情を表現しやすく、理解してもらえる環境で成長することが、健康な心身の発達にとって非常に重要です。これによって、子供は自己調整のスキルを発展させ、将来的に感情を適切にコントロールできるようになります。
ABAの消去、タイムアウト
近年、応用行動分析学(ABA)の認知が徐々に広まり、ABA実践者による
「良い行動は褒め、悪い行動は無視する」
「問題行動を厳しく叱るのではなく、落ち着くまで反省(タイムアウト)させる」
といったアドバイスをよく目にするようになりました。
確かに行動分析の原則としては間違っていませんし、この方法が有効な場合もあるでしょう。
しかし、ABAはそれほど単純な科学ではありません。「問題行動を無視する」という方法は、問題行動が周囲の注目を得るために行われている場合に使われるべきです。上記の例のように、不適切な行動(かんしゃく)が恐怖や不安から生じている場合、無視を使うと逆効果になる可能性があります。
タイムアウトも行動分析を間違うと、逆効果になることがあります。
例えば、勉強が嫌いでふざけている子どもを、先生がタイムアウトのために別室に連れて行くとします。その子どもは、先生によって「勉強しなくて良い」というお墨付きを得ることに成功しました。ですからこの子は今後もさらにふざけ続けるようになるでしょう。
あなたにとっての目標は?
あなたの第一の目標は、癇癪を即座に止めることではなく、子供が強い感情をコントロールできるようになるよう根気よく導いていくことです。
深呼吸をして、子供の癇癪に対処する成功の定義を変えましょう。あなたの子供がスーパーで特大のかんしゃくを起こしたとしても、それはあなたが悪い親だということではありません。
時間をかけ、忍耐強く、繰り返し練習
子供のネガティブな感情をそのまま受け入れ、愛情深く接すれば、すぐに結果が出るわけではありません。子どもは成長過程にあり、健全な脳を発達させ、感情や強い気持ちをコントロールできるようになるには、時間と忍耐と練習が必要です。
かんしゃくへの対処法
かんしゃくを起こした幼児に対処するのは、親にとっては非常に難しいことです。ここで大切なのは、泣き止ませることではなく、思いやりを示すことです。子どもは嫌がらせをしているのではなく、学び、成長しているのだと理解してください。このような瞬間を、つながり、育み、愛情ある関係を築く機会として捉え直してみると、少し取り組みやすくなるかもしれません。お試し下さい。
次回はもっと具体的な対処法をステップごとにご紹介します。
Reference
Li, P. (2015). Turning Tantrums Into Triumphs: Step-By-Step Guide To Stopping Toddler Tantrums (1st ed.).