『イノセント・デイズ』
早見和真さんの作品。
元彼のアパートに放火して、その妻と子供3人を殺害した雪乃。
彼女は法廷で死刑判決を受ける。
彼女の過去を知る人々は違和感を覚え、真相を探そうと奔走する。
刑務官、産婦人科医、義姉、親友、元彼の友人といったさまざまな人物が、雪乃の過去について振り返るという形式がとても面白かった。
新聞の報道を見る限りは、雪乃が悪人のように思えてしまった。しかし、だんだんと雪乃の周りの人の話を聞くと、雪乃の判決が覆ってほしいと思うようになった。
放火したのは雪乃だと思っていたので、もし刑務官の立場だったら辛すぎて雪乃を直視できないだろうと感じた。
印象に残っている文
判決理由とは本来誰のためのものなのだろう? はじめて死刑判決の理由を聞いたとき、そう感じたのを覚えている。これから死を宣告される者に対し、だから納得しなさいというものなのか。それとも怒りに駆られた遺族や市民に対し、これをもって溜飲を下げろということか。
「お前が将来どんな仕事に就こうと、絶対に忘れてはいけないことがあるよ。相手が何を望んでいるのか、真剣に想像してあげることだ」
未決囚との面会は比較的簡単に実現するものの、確定死刑囚の場合は「親族」や「重大な利害に係る用務のある者」といった条件に当てはまる人間に限られる。
「でね、その“イノセント”には“無実の”っていう意味もあるんだって。不思議だよね。どうして“純粋”と“無実”が同じ単語で表されるんだろうね」