『崩壊の森』
本城雅人さんの作品。
ソ連の特派員として派遣された新聞記者の物語。
土井垣のお酒の強さには驚いた。現地の人とお酒の量が同じくらいでも平気であるというのがすごい。
咲子が出てくるときは、物語全体の雰囲気が明るくなったように感じた。咲子と土井垣がドライブをするシーンが面白かった。
土井垣の運転手を勤めた男の言葉がとても印象に残っている。
印象に残っている文
「日本から来るみなさんが、このゴミ臭さとガソリン臭さはなんだと聞きます。だからそのたびに私はこう答えるのです。これが共産主義の匂いですと」
原稿用紙に書いて渡すと、「まぁまぁだな」とつまらなそうに言われ、そのままゴミ箱に捨てられた。まぁまぁは、新聞社では合格を意味する。
記者はスクープ記事であればあるほど、自分が書いた形跡を隠そうとする。書き手が分かればネタ元までバレてしまい、そのネタ元を他紙に潰されると、次からスクープが取れなくなるからだ。
青になったが、咲子はすぐにスタートさせない。前の車を信じてはいけないのがソ連での運転の鉄則である。
「ソ連共産党はマルクス=レーニン主義で結びついた同志の集団と言われてきたけど、僕らにとっての社会主義思想は、所詮はこの集団の中にいれば安全であり、なおかつ自分たちに都合がいい巨大な傘に過ぎなかったんだ」