『ラバーソウル』

井上夢人さんの作品。

タイトルはビートルズのアルバム名である。

各章のタイトルがアルバム内の曲順になっている。


醜い容姿のために家族からも敬遠されている鈴木誠。ある日、彼はモデルの美縞絵里と出会ったことにより、物語が進んでいく。

誠が絵里の行動を見守る描写に不快感を抱いた。

一般の人との認識のズレが生じている部分を、誠が丁寧に説明していた。衝撃のラストが待っていた。

688ページあるが、ページをめくる手が止まらなかった。


印象に残っている文

二通りありますよね。男と女で友情が成立するかって。するって思う人と、無理って思う人と。あたしは、相手によると思うんです。友情が成立する相手と、無理な相手がいるんじゃないかって。

男が絵里を自分の部屋に連れ込んでから八時間ほどの地獄のような時間を、ぼくはローバーミニの中で過ごした。まるで硫酸の海に投げ込まれたような気持ちだった。いっそ、強烈な酸に骨まで侵され、死んでしまえたらずっと楽だったかもしれない。


ぼくは、化け物だし、魔物なのだ。

ぼくは化け物だ。化け物がやることの理由なんて、あなたがたに理解できませんよ。


大丈夫かと訊いて、大丈夫じゃないという答えが返ってきたら、刑事さんの場合はどうなさるのですか? その相手が大丈夫な状態になるまでのケアが、最後までおできになるのでしょうか?

「大丈夫ですか」と訊く人間に、そこまでの覚悟などないですよね。それは、そのお相手が、大丈夫かという言葉に傷つかない人たちだからですね。

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