『弊社は買収されました!』

額賀澪さんの作品。

老舗の洗剤メーカーが外資系企業に買収されてしまう。

総務部に務める忠臣は、会社のために奔走する。


「実際に自分が働いている会社が買収されたらどうなるか?」ということを学ぶことができた。

今まで合併吸収された企業の人たちも、見えないところで戦ってきたのだろう。

印象に残っている文がかなり多くなってしまった。

人と人とがわかり合うことは、大変であると思った。人を動かすのは熱意や寄り添おうとする心であると感じた。


印象に残っている文

「大体、PMIって何だよ、経営統合でいいだろ。PMOって何だよ、事務局でいいだろ。アジェンダ、エビデンス、コミットメント、シナジー……何でもかんでもカタカナにするんだから」

「わからないことがあるなら教えますけど」と言われたが、今の自分は「何がわからないかわからない状態」だ。

「こう見えて、十年以上も会社の何でも屋をやって来たんだ。納得できるとか好きとか嫌いとか関係なく、頼まれたらしっかり取り組むっていう癖が身についちゃってるんだよ」

「今は会社の一大事なんだ。何でも屋がいちいち立ち止まって納得するまで悩んでたら、会社が回らないだろ。頼まれたらとりあえず動くのが総務部の仕事だと僕は思ってる」

顧客に対してさまざまなメリットを提示して、希望商品より上位の商品を買ってもらおうという販売方法がアップセル。ダウンセルはその反対で、希望商品より下位の安い商品を買ってもらおうとする。

世の中は「一つの商品にどれだけの付加価値があるか」を注視するようになった。洗浄力、除菌力、抗菌力、香り、防臭、繊維の保護、環境への配慮にコストパフォーマンス……。数百円の粉洗剤や液体洗剤、洗濯石鹸にさえ、とことんプラスアルファを求める。

「あの人達にとっての〈頑張って働く〉は、イコール〈たくさん働く〉だったの。それが正しい時代に会社員をしてたし、現にそれで上手く行ってた。」

「会議がスムーズに終わったということは、後ほど問題が起こるってことですよ」

「総務の仕事っていうのは、家事みたいなものだ。母親にやってもらえて当たり前の仕事。当たり前すぎて、労働として価値を見出されない。当たり前だけど、なくなったら困る。みんなが気持ちよく、一生懸命仕事をするのに必要な仕事だ」

「そりゃあ、私も、椎葉の『煩わしいものを捨て去ってこそ今の時代の生き方だ』みたいなやり方、ちょっと羨ましいなって思うよ。でも、捨てていい煩わしさと、捨てちゃ駄目な煩わしさって、あるじゃん。榊原さんの見舞いに行けとは言わん。飲みに行けとも言わん。飲み会でお酌しろとも言わん。そんなの、本当に尊敬してて、親しくしてる人とだけでいい。でも、必要なコミュニケーションは取りなよ。会社のためじゃなくて、あんたが楽しく仕事をするためにさ」

働くとは、何てコスパが悪いんだ。大きな責任を背負わないようにすると、上司に引っ付いて顔色を窺いながら働かなくちゃならない。一人で気楽に働きたいなら、すべてを自分が背負わなければならない。

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