『奇跡の人』

原田マハさんの作品。

最初は一体何の話なのかさっぱり分からなかった。「重要無形文化財」といった言葉や文部省の役人が出てきて、謎を残したまま安の話に進んでいく。
 

れんと安は、ヘレンケラーとアン・サリバン先生の名前がもじられていることに途中で気が付いた。キワが出てきたときにとても嬉しくなった。「待っていました、キワさん!」という心境だった。ヘレンケラーの水のエピソードが安の話の最後に出てきていて、原田マハさんの物語の構成力が凄いと思った。藤本吉右衛門さんの人柄がとても立派で、私も見習いたいと思った。

そう、自由。この世で最も尊いもの。いかなる人間であれ、いかなる性別であれ、決して失ってはならぬもの。
「確かに、れんは、見違えるほどおとなしくなりました。けれど、それは、男爵や奥方さま、この家の大人たちにとって、都合よく振る舞ってくれる子供に変わった、というだけのことです。あなたさまも、奥方さまも、ご自分たちの娘御に、この世界の何も見せず、何も聞かせず、しゃべらせようともしていない。ただ、お人形を膝に載せて可愛がっているようなものではありませんか」
「れんは、不可能を可能にする人。……奇跡の人なのです」
ひとつひとつに、名前がある。それらのものを、かたちづくりたもうたのは、神だ。そして、名前を与えたのは、人間なのだ。

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