『その扉をたたく音』
瀬尾まいこさんの作品。
29歳で無職の宮路。
サックスを演奏する渡部君。
口は悪いがどこか憎めない水木のばあさん。
宮路にウクレレを教えてもらう本庄のじいさん。
宮路と渡部君がセットリストを決めるときに、「見上げてごらん夜の星を」を演奏して見事音が重なったシーンが印象に残っている。「心の瞳」は中学校の合唱コンクールで歌っていたクラスがあったので、よく覚えていた。
印象に残っている文
彼の吹くサックスはどうしてこんなに柔らかいのだろう。その穏やかな響きにすぐに曲の中に連れ込まれてしまう。
「もし、ウサイン・ボルトが、俺こう見えて走るの苦手なんだって言ったら、驚くだろう? そんなの、謙遜にもなりゃしない。事件だ事件」
「金持ち」に「お坊ちゃん」、それらの言葉には、甘やかされて育って何もできないだろうという気持ちが込められている。
「サックスを吹くことくらいしか自分の世界がなかった時は、つまらなくて。でも、一つ何かが目の前にやってくるたびに、誰かと何かをするたびに、音楽も楽しいものに変わっていった。そんな感じです」
楽しい時間は、体からも心からも無駄なものを取っ払ってくれる。それだけで十分だ。