『にじいろガーデン』 1 佐平荘具 2022年8月10日 20:48 小川糸さんの作品。小川さんにしか書けない作品だと思う。一章ずつ語り手が変わっていくのも良いなと思った。作中に出てくる↓の憲法がとても素晴らしいと思った。「自分には決して嘘をつかない。一日に一回は、声を上げてげらげら笑う。うれしいことはみんなで喜び、悲しいことはみんなで悲しむ。絶対に、無理はしない。辛かったら、堂々と白旗を上げる。」私は、ニー二が目を覚ます日が来ることを待ち望んでいる。印象に残っている文手のひらに、秘密の小鳥を預かっている気分だった。「さっきの卵焼きは、泉さんが、わたしのためだけに一生懸命作ってくれたものでしょう。だから、おいしかったの。すっごくまずかったけど、それもふくめてあ、チョコにとっては、世界で一番、おいしかったの」「ねぇ、泉ちゃん教えて。正しいって、何なの?誰にも迷惑なんかかけていないのに、どうして自分に正直に生きちゃいけないの? レズビアンだってことを、なんで親から全否定されなくちゃいけないの? もう、こんな息苦しい所になんかいたくない」「泉ちゃんは、本当に怖がりだねぇ。でも、大丈夫だよ。向こうはただ、わたしたちのことを観察しているだけだから。ここに住む家族としてふさわしいかどうかを、見極めようとしているんだと思う。だって、わたしたちより木の方が、ずっとずっとこの土地に長く暮らしている先輩だもの。きっとわたしたち、今、こだまに試されているの」結局のところ、事実婚だなんて悠長なことを言っていられるのも、異性愛者だからだ。家族というものは、きっと最初から家族のわけではなく、毎日毎日、笑ったり、怒ったり、泣いたりしながら、少しずつその形が固まっていくものだと思う。「男と女は認められるのに、男同士、女同士だと、どうして急に変な目で見られるの?」長年連れ添った夫婦を、空気のような存在と表現することがあるけれど、泉ちゃんはまさに、わたしにとっての空気そのものだ。目には見えないけれど、ないとすぐに死んでしまう。あまりにも、存在感がないというか、頼りなかった。上から消しゴムでこすったら、そのまま消えてしまいそうな人だった。好きな人と共に歳を重ねること、家族が平和に暮らすこと。ありきたりだけれど、それ以上の贅沢があるだろうか。「事実は、時に間違うこともあると思うんだ。でも真実は、どんなに世の中が変わっても、普遍的なんだよ。大事にしなくちゃいけないのは、真実の方だと思うんだ」「いくら隣の花の色の方がきれいだなぁ、って羨んでも、自分に与えられた色を、自分の好きなように変えることはできないもの。その色で、精いっぱい生きるしかないでしょう?」「話を聞くなんて、誰にもできそうだけど、実はものすごく難しいんだ。辛いことや悲しいことは、ずっと自分の胸の内側に留めておくと苦しくなるけど、それを誰かに話して共有することで、薄まったり弱まったりするんだよ。」「結婚ていうのはね、たぶん、幸せ探偵団を結成するみたいなものよ。時には髪を振り乱したり、大きな敵と闘ったりしながら、それでも幸せのために前に進んでいくの。ふたりにとっての幸せは、同じものなの」「人って、生まれてくる時に、同じ量の粘土を与えられているんじゃないかと思うんだ」「残されるって、本当に辛いよね」カカが、ズボンについた土を払い落としながら、しみじみとつぶやいた。「楽しかったり幸せだった思い出を瓶に保存しといて、それをちびちび出してきてはさ、残りの人生を食いつないでいかなくちゃいけないんだもの」 ダウンロード copy いいなと思ったら応援しよう! チップで応援する #小川糸 #にじいろガーデン 1