『恋文の技術』
森見登美彦さんの作品。
作中において、森見登美彦さん宛にも手紙を送っていてとても面白い。
守田くんが過去に家庭教師をしていた子への手紙が一番好きだ。
手紙だけで話が進んでいくにも関わらず、登場人物の人柄が伝わってくる作品だ。
印象に残っている文
君は、彼女が「実験でお茶目な失敗をする」のが可愛くてならぬようだが、それは単なる不器用と準備不足が原因で、これは怠惰の証である。
恋をした男は阿呆だから、有益なことを言おうとして必ず無益なことを言う。ただ相槌を打ちながら、真面目に耳を傾けること。
ナメクジを裸足で踏んだことがおありですか。得も言われぬ感触で、恍惚と不安がいっぺんに味わえます。ぜひ一度お試しください。
先生のせんもんはクラゲですが、片思いもせんもんです。
それにしても、自分が求める相手に求められるというような虫の良い現象が、本当にこの地球上では起こっているのですか。
ただ注意すべきは、たとえ本質を見抜いても、あからさまにそれを突いてはいけない。世の中でもっとも危険な行為は本質を突くことだ。