『名探偵のままでいて』
小西マサテルさんの作品。
認知症の祖父と小学校教員の孫娘が不思議な事件を解決していく話。
プールの“人間消失”の真相が一番好きな話だ。まどふき校長先生が女性だとは全く予想がつかなかった。2つの推理のうち悪い方の真実を知ったときは、「まどふき校長先生、そんな人だったのか」と思った。マドンナ先生の“消失”にまさか祖父も関わっていたとは!結末まで素晴らしい話だった。
話の中で過去のミステリーも紹介されて、その本を読んでみたいと思った。特に『九マイルは遠すぎる』を読んでみたいと感じた。
四季くんの舞台はとても面白そうなので見てみたいと思った。四季くんが海外ミステリーや野球実況についての批判をするシーンがかなり面白かった。
印象に残っている文
DLB最大の特徴であり、他に類をみない症状は、なんといっても「幻視」だ。
楓は自分のそうした認識や振る舞いに、割り切れるはずの割り算でなぜか剰余が出てきてしまうような奇妙な違和感を覚えていた。
DLB患者がいる場合、なるべく服の部屋干しはしないほうがいい。干された服を人と勘違いしてしまうからだ。
「ふうん…居酒屋で鮭ハラスをつまんでる客の声援が、国立競技場まで伝わるんですか。だったら日本代表はとっくにワールドカップで十連覇してるはずですけどね」
「打った“瞬間”にホームランと分かるわけがない。コンマ何秒か経ったあと、打球音に加え球の角度と勢いを見て、初めてホームランと分かるわけです。それなのに定型文に嵌るあまり、結果的には実に恥ずべき嘘をついてしまっているんです。」
「芝居のあとに演者から感想を訊かれたら、答えは『最高でした』しかない。演者はトランス状態にある。褒められたいだけなんだ」
「四季くん。世の中で一番悲しい四文字熟語ってなんだと思う?」中略「わたしはねーー“天涯孤独”だと思うの」
「『一昨日はうさぎを見たわ』」「『昨日は鹿』」中略「『きょうはあなた』」