「失恋墓地」#毎週ショートショートnote
「失恋供養、承ります」
午前一時を過ぎた公園で、呆然とSNSを巡る私の検索ワードにヒットしたのは、そんな文言であった。
その寺は、SNSを中心に近頃ちょっとした名所となっている様である。色々と考え付くものだなと、私は俗な思いを抱きながらも、どこか感情の吐口を見つけたような気がした。
「当山では、皆様の古い愛執を断ち切り、新たなご縁を結ぶお手伝いをさせて頂いています」
若い住職はそう語ると、古びた小堂に私達を案内した。小柄な仏像を中心に、埋め尽くす様な無数の木札が立てられている。
「皆様の古い愛執は、ここに安置いたします」
私は少し身の強張るのを感じた。それはなにも、その薄暗さや、隣の若い女性の啜り泣く声、によるものではない。「ここは恋の墓場だ」そんな思いが、私の中に巡った。
しばらくして、その寺の話題は膨大な情報に埋もれていった様である。「恋愛不成就スポット」それが人々の投稿した最後の話題であった。
私に恋人はまだできない。
「失恋墓地」(完) — 410文字
#毎週ショートショートnote
参加させていただきました。
いつも、素敵なお題をありがとうございます。
「供養」は、時間と共に、じっくりと行わなければなりませんね。次へ進むために。
かしお