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2023年公示地価発表!不動産価格上昇!?ウソとホント

2023年公示地価発表

3月22日、国土交通省が2023年1月1日時点の公示地価を発表しました。

日本経済新聞「公示地価15年ぶり上昇率 全国平均1.6%」
日本経済新聞「公示地価15年ぶり上昇率 全国平均1.6%」

国土交通省が22日発表した2023年1月1日時点の公示地価(総合2面きょうのことば)は、住宅地や商業地といった全用途の全国平均が前年比1.6%上昇した。上昇は2年連続で、リーマン・ショック前の08年(1.7%)に次ぐ水準となった。

日本経済新聞「公示地価15年ぶり上昇率 全国平均1.6%」

商業地は全国で1.8%上昇した。オフィスや店舗が集まる都心部がけん引した。東京23区で千代田、中央、港の都心3区が3年ぶりにプラスとなり、2.1%、2.1%、2.8%上がった。
東京、大阪、名古屋の三大都市圏も商業地が2.9%上昇。前年は横ばいだった大阪が3年ぶりにプラスに転じた。
コロナ禍からの経済社会活動の正常化が進み、都心回帰の傾向を映し出す。インバウンド(訪日外国人)回復期待から東京・浅草や京都・祇園といった観光地で上昇が目立つ

日本経済新聞「公示地価15年ぶり上昇率 全国平均1.6%」
日本経済新聞「東京都内の公示地価、23区すべてで商業地上昇」

東京都全域の前年比平均変動率を見ると、全用途が2.8%、商業地が3.3%、住宅地が2.6%それぞれ上昇した。

日本経済新聞「東京都内の公示地価、23区すべてで商業地上昇」
日本経済新聞「地方圏の公示地価、2年連続上昇 コロナ禍から回復顕著」

住宅地は2.1%上昇し、23区すべてで前年から上昇幅が拡大した。複数の路線が乗り入れる利便性の高い駅周辺のマンションや戸建ての需要が旺盛で、都内では上昇率の大きい順に台東区(4.8%)、豊島区(4.7%)、中野区(4.6%)だった。

日本経済新聞「地方圏の公示地価、2年連続上昇 コロナ禍から回復顕著」

このような発表内容となりましたが、価格順位で全国トップは高級分譲マンションが供給される東京都港区赤坂エリアでした。

東京都港区赤坂エリアは1㎡あたり12万円(2.4%上昇)。
6年連続で首位となっています。

一物四価

1つの不動産には別指標の価格が4つあり、それを「一物四価」と言います。

「一物四価」の指標はそれぞれ以下の通りです。

実勢価格

不動産を実際に売買するときの価格。
「時価」とも呼ばれています。
この実勢価格は最終的に売主と買主が合意して、実際に取引を行った価格です。

公示価格

国土交通省が毎年1月1日時点の土地を算定した価格。
全国の都市計画区域などに設置された標準地1地点につき、2人以上の不動産鑑定士が鑑定評価します。
公示価格の役割は一般の土地取引に指標を与えることであり、公共事業用地を取得する際にはこの公示価格が基準となります。

固定資産税評価額

各市町村が3年に一度、1月1日時点の土地価格を算定した価格。
固定資産税や都市計画税、不動産取得税、登録免許税といった税金を算出するための基準となる価格です。
固定資産税評価額は公示価格のおおむね70%で設定されています。

相続税評価額

国税庁が算定するもので、毎年1月1日時点の価格が7月に公表される価格。
相続税や贈与税の基準となる価格で、公示価格のおおむね80%で設定されています。

公示価格とは

先述でご説明した公示価格をもう少し詳しく見ていきましょう。

先述でもお伝えしましたが公示地価とは企業や個人の土地取引、公共事業用地の取得に関する価格の目安となる土地の価格のことです。

国土交通省が1月1日時点における全国2万6000地点の1平方メートルあたりの土地価格についてまとめ、毎年3月に公表しています。

その際、地価公示法に基づいた調査によって土地の用途を住宅地・商業地・工業地と分類しています。

また、各都道府県は7月1日時点における公示価格を参考に補正し、基準地価として9月にまとめ、公表しています。

公示価格の推移

30年間の公示価格推移】

不動産プラザ「【2023年】過去30年の公示地価推移から今後の全国・地方の住宅価格の短期・長期見通しを予測(グラフ付き)」

バブル崩壊後、日本の不動産価格は下落しました。
しかし、東京においては五輪開催決定後から上昇傾向にあります。

東京以外の地方においては下落トレンドが続いており、不動産価格のエリア格差が起こっていると言えるのではないでしょうか。

コロナ終焉での不動産市況

今回の公示地価におけるポイントは2つ。

  1. 新築マンション価格上昇による用地価格上昇

  2. コロナ終焉によるインバウンド需要拡大

1:新築マンション価格上昇による用地価格上昇

コロナ禍の影響で在宅勤務が増加し、それによって都心部を中心に住宅需要が高まり住宅不動産全般が品薄な状態となりました。

その流れを受け、直近2年間で新築マンション分譲価格はバブル時代を超える過去最高価格を更新し続けています。

ここ最近のマンション開発は、
・都心
・駅近
・駅直結
・タワーマンション

など特徴のある企画のみに限定されており、このような立地は仕入れ競争が激化しているため、土地価格が今までにないほど高騰し続けています。

日本経済新聞「都市部地価に3つの追い風」
日本経済新聞「都市部地価に3つの追い風」

2:コロナ終焉によるインバウンド需要拡大

コロナ禍となりインバウンド需要は低下していましたが、政府が外国からの個人旅行客の入国を解禁し入国者数の上限を撤廃しました。

これによりインバウンド需要が拡大し、観光地や都心部を中心に海外マネーが流れ込み、地価の押上要因となりました。

日本経済新聞「不動産、海外マネー変調 金融不安で投資に慎重」

公示価格は遅行指数なので注意

今回公示価格が発表されましたが、これは1月1日時点の価格であり、この数か月でも不動産流通に大きなインパクトが起こり得る数々の変化が起きています。

代表的なものですと...

①12月末:日銀黒田総裁が国債金利誘導を0.25%⇒0.5%に引き上げ
②2月:黒田総裁から植田新総裁への人事発表

②3月中旬:米国金融機関(3行)クレディスイスの破綻による世界金融不安

(②においては今後イールドカーブコントロールなどの調整がされる懸念あり)

これらは不動産市況に大きなインパクトを与えるような出来事です。

その中で、現在の不動産市況には以下のような問題点も発生しています。

① 住宅用不動産在庫過多
テレワーク需要も一服感があり、ここ3年で需要の先食いをした結果、利便性の悪い不動産は多少の値下げしても売れない状態となっています。

また、郊外型などを中心に大幅な在庫過多状態となっており、現場では値引き合戦が加速しています。

② マンション価格の一服感と値下がり
相変わらず都心部のプレミアマンションなどは好調に売買されていますが、都心部でも上昇相場が一服し、値引き交渉を受けながら成約がされているのが実情です。

③ 建築費コストの上昇が止まらず、デベロッパーの経営危機懸念
年明けにはワンルーム施工業者の倒産もありましたよね。
今後、中小規模のデベロッパーは利益確保しづらい環境になると考えられます。

④ 今後金利上昇リスクから不動産ファンドの運営も厳しくなる。
これまで好調だった不動産ファンド系ビジネスも価格高騰と金利上昇リスクで運営が難しくなるのではないでしょうか。

新聞紙面上からは「全面的な不動産価格上昇で好調である」と読み取れますが、現場サイドの意見からすると好調とは言い難い状況です。

そのため、これからの不動産市場は一部の地域を除き厳しい時代になると思われます。

まとめ

・住宅地や商業地といった全用途の全国平均が前年比1.6%上昇しました。2年連続の上昇という結果になり、リーマン・ショック前の08年(1.7%)に次ぐ水準です。

・東京都全域の前年変動率は全用途2.8%、商業地3.3%、住宅地2.6%とそれぞれ上昇しました。

・公示地価は遅行指数なので注意!リアルタイムの動向ではありません。

・今後は、より不動産需要のエリア格差が拡大すると思われます。


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