商業不動産不調で不動産価格暴落か?
先日、「世界のオフィス空室率急増」という内容が日経新聞のコラムで取り上げられていました。
どうやら世界の主要都市でオフィスの空室が拡大しており商業用不動産が危機的な状況のようです。
今、商業用不動産市場にどのような変調が起きているのでしょうか?
また、この流れが今後日本の不動産市場にどのような影響を及ぼすのでしょうか?
今回はそんな疑問を私独自の視点で解説していきたいと思います。
世界のオフィス市況が厳しい
日本(東京)のオフィス空室率は?
東京のオフィス空室率は5%~6%台で推移しています。
サンフランシスコ・ロサンゼルス・北京・ニューヨーク・香港などは15%超の空室率ですので、主要都市の中で日本の空室率は抜群に低い状態なのです。
しかし、好不調の境目とされる5%は超過しています。
また、東京5区(千代田/中央/港/新宿/渋谷)などでは大型の再開発プロジェクトによる大型のオフィス竣工が目白押しなので、供給過多になる恐れがあるという意見もあるので注意しなければいけません。
オフィスの空室率が高い理由
今回の急激なオフィス空室率上昇要因には、下記3つがあると思われます。
コロナ禍のリーモートワーク定着によるオフィス需要の減退
テックバブル崩壊における局地的リスク
地政学リスクへの対応
①コロナ禍のリーモートワーク定着によるオフィス需要の減退
これについては、よく知られている事実なので論ずる必要はないと思います。
②テックバブル崩壊における局地的リスク
こちらについては、2022年末以降テック企業のレイオフ実施などがあり、この数年で大盛り上がりであったGAFAMバブルが崩壊したことが影響しています。
Twitter社では従業員の半分をレイオフしました。
そしてその流れに追随し、AmazonやGoogleなど各テック企業も続々とレイオフを発表
その後、2023年3月にはシリコンバレー銀行倒産など米国大手地銀が3行破綻するに至りました。
これは米国全体での変化ではなく、「テックバブル崩壊」によるサンフランシスコ・ロサンゼルス・ニューヨークなどのテック系企業需要の局地的な変化であると考えられます。
③地政学リスクへの対応
ここ数年、米中経済対立における中国リスクが高まっており、その勢いは収まっていません。
また、ロシアのウクライナ侵攻などにより中国と台湾の有事が懸念されており、中国という国に対しての地政学リスクが増大しています。
アジアの拠点として、上海や香港の立ち位置が崩壊してきている影響は大きいと思われます。
このような米中経済戦争激化や台湾有事などによる地政学リスク回避の流れはまだ加速していきそうです。
これからのアジア経済の重心は中国でなくインドやベトナム、インドネシアなどグローバルサウルに移行すると考えられているので、中国のオフィス需要はより減退していくのではないでしょうか。
商業用不動産の値下がりへ
この流れは日本の不動産価格指数にも表れていきています。
住宅価格は右肩上がり基調ですが、商業用不動産は22年後半あたりから調整局面に入ってきているのがわかります。
商業不動産懸念から金融不安へ
金余りの時代で膨張した投資ファンドが不動産に傾斜したことで、ここ数年の商業不動産は値上がりを続けてきました。
しかし、今後空室率が改善しないまま金利が上昇し不動産ファンド勢が苦境に陥れば、それらを支えてきた銀行にも大きな影響を与え、金融信用不安を引き起こす可能性が大いに考えられます。
実際に、アメリカのパーク・ホテルズ&リゾーツは6月5日にローン金利支払い停止でデフォルト(債務不履行)を宣言しています。
このようにオフィスなどの運用難によって不動産運用会社の倒産が連鎖すると、金融機関は不動産市場への融資を抑制し始め、リーマン危機同様の金融信用不安に陥る可能性があるのです。
日本の商業不動産における懸念点は「オフィス空室率」よりも「調達金利上昇」による影響の方が大きくなるのではないでしょうか。
日本の不動産市場はここ数十年、超低金利による恩恵を受けすぎています。
不動産ファンド業界でも1%以下で資金調達し、4%程度の不動産インカムで十分ビジネスが成り立ってきました。
しかし、この調達金利が欧米並みに上昇し始めれば、日本の不動産ファンド事業は壊滅状態となることは間違いないでしょう。
現在の日本財政や経済成長の環境下では短期的な金利上昇は難しいと思われますが、この異常な低金利から方向展開した場合は将来の大きな火種になることは間違いので「空室率上昇」だけでなく「金利上昇」にも注意が必要です。
まとめ
世界主要都市でオフィスの空室率はリーマン危機後最大
GAFAMバブル崩壊と中国地政学リスクの影響が大きい
東京のオフィス空室率は6%程度と比較的低い水準
今後、商業不動産市場が崩壊し金融信用不安となる可能性がある
日本の場合は「空室率」よりも「金利上昇」に注視すべき
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