happyな愛のvibes

「フォーマルなんてわかんねぇよなぁ」
男子トイレに入って来て開口一番にアロハシャツ
の男性が独りごつ
「なぁー」
どうやら先に
排尿準備をしていた自分に話しかけていたらしい
不意をつかれつつ
「確かにですね」
と曖昧に頷き
曖昧な肯定する
「まこっちゃんの結婚式だし、でも二次会だしちょっといい服は着てきたんだよ」
アロハさんはいつの間にか
隣りの便器に移動している
結婚式の二次会
会場はゲストハウス
勢いよく放たれる
Heineken２本分
「俺たちみたいなのは正装とか言われてもなぁ、わかんないよな」
みたいなと言われた自分は
390マートで買った
イタリア製のピンクのド派手な襟付きシャツに
蝶ネクタイをしている　
下半身は短パンとランニングシューズ、
ここぞという時に着ると決めていた
ピンクのシャツは
まるでお笑い芸人の舞台衣装みたいだ
「蝶ネクタイかわいいなぁ」　　
蝶ネクタイを褒められた
「ありがとうございます」
二次会前に人に借りた
蝶ネクタイが褒められた
「Tシャツも居るしなんか自由ですね、
どういうテンションかテンションがわからないまま二次会来たけれどフリーですね」
排尿を終えて
鏡の前に移動して手を洗う
ピンクのシャツと赤い顔
出来上がってる酔っぱらいが
写っていてちょっと笑う　
「俺さぁエハラって言うんだ」
後ろから声がする
アロハさんはエハラさんというらしい
「シナモンです」
己の名を名乗る
「シナモン？いいねぇ。シナモン。」
エハラさんも隣りに来て手を
バシャバシャ洗う
びしゃびしゃの手を差し出してくる
握手をする
赤い顔した中年の酔っぱらい同士が握手している
何この画
シュールだな
「じゃあ」
とエハラさんはふらふらした危うい足取りで
トイレから出ていった　
また　
手を洗うべきか　
拭くべきかちょっと悩んで
自前のタオルで手の水気を拭き取る
入れ違いでまた酔った誰かがトイレに入ってくる
酔っぱらい同士で
酔っぱらい同志だ
happywedding
happyvibes
めでたい場所は
多様で寛容な愛に溢れている