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しし座

『占星術の鏡』シリーズの9回目。昨日のかに座では著者の悲しい末路についても触れてみた。文学者になりたかったマックスジャコブが、どういう経緯で占星術の共著者になったのか、興味深い。

香りはアンバー、ローズマリー、味は快い甘さ、色は深紅
占星術の鏡にはこのほかにも金属や石などもその星座に纏わるものとして出てくる。しし座は金属は黄金で石はダイヤモンドである。
つくづく、「中心」だなと思う。
アンバーというのはふたご座の「麝香」同様、動物性の妖艶で濃厚な香料である。今は天然のアンバー(正式にはアンバーグリス)は流通していない。捕鯨禁止の影響が大きい。アンバーグリスはマッコウクジラの体内にできた結石で、古い時代には何かで体外に排出され海中を浮遊していたものを人類が発見したものだった。
黴臭さを伴うような、それでいて品格のある深みある香りだ。
別名を龍涎香という。
付加価値をつけるために、アラビア商人たちが「龍の涎」だとこれを紹介したことからその名がついたそう。
もうひとつのローズマリーはシソ科のハーブの代表選手。
中世、老齢のハンガリー女王を若返らせたという伝説のハンガリアンウォーターのメインに用いられた。
香り自体は動物性の濃厚なアンバーと、ハーブのローズマリーと何の脈略だろうと思うけれど。
真ん中が似合う、「エース」のような存在感が共通しているのかもしれない。アンバーもローズマリーもそれぞれの香りの領域で力強さを発揮している。
カエサルもココ・シャネルもしし座だ。シャネルの香水COCOの特徴はアンバーの香りだ。
神というより王という言葉がしし座には似合う。
しし座について語る時、アンバーグリスの香りと、ローズマリーの香りに触れてもらえればそれで十分な気がしてきた。

ミッソーニのアリアという香水がある。
私はこの香りにマリア・カラスの声を重ねた。
しし座の人が隣に座った時、ふと立ち上がってくるのがアリアという香り。
しし座の中心性は神的ではなく王的であるだけあって、肌触りや肉声を伴うものだと思う。カラスの声がまさにそうで、端的に言えばデジタルではなくアナログ。バラツキもあるしムラもある。中心というのは完全とは違って、偏りや揺れの真ん中ということなのかもしれない。保とうとするのではなく、動くから揺らぐ。その人間味の全開で中心を司る、それがこの星の強さなのかもしれない。

1987年のリリース・スイートフローラル。
ピーチやラズベリーなどのフルーティー、チュベローズやイランイランなどのフローラル
これでもかというくらいスイートなラインアップにさらにバニラ、
そしてアンバーを加え、厚みのあるそれでいてべたつきのない香りの感覚になっている。

香り、思い、呼吸。

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