運ばれる自然と包んでくれる自然 11月15日~365日の香水
思わず海に飛び込みたくなる
怪しいことではなく、この11月の話ではあるけれど場所は南半球。
オーストラリアでは夏の到来である。
青い海に飛び込むような感覚、それが今日の香水のテーマ。
あと一か月ほどで、サンタクロースはサーフボードに乗ってやってくる。
ちいさな自然と大きな自然
旅先でバルコニーに出て、風が運ぶ緑とレモンの香り、そんな地中海での経験もあるかもしれない。
風に乗って運ばれるような、ふと感じる自然もあれば、自然に包まれる、どこまでも果てしない自然に包まれることもある。
相手(自然)は何一つ変わらないのに、人がつくった環境や境界線の中で、小さな自然や大きな自然が存在するのは面白い。
今日の香水~太平洋の岩の苔(パシフィックロックモス)
パシフィックロックモスというネーミングからはシプレータイプ、モッシーノートが特徴のように思う。
けれど、ここでのモス(MOSS)は、香料原料のオークモス(ORKMOSS)を指すのではなく、オーストラリア沿岸部の岩々を覆う苔のようだ。
更に言うと、海風、潮の香り、苔に覆われた岩、夏の自然の光景を再現した言葉ととらえたら良さそうだ。
ブランドが公表する香水ピラミッド(トップノート、ミドルノート、ラストノート)を形成する香料名は必ずしも素材由来とは限らず、イメージを再現した調合ベースの”名”のこともある。
ヴィジョンの大きさ
これは明らかに大きな自然を感じる。壮大さや果てしない広がり、受け止めるよりも包まれる感覚。
海ということで浮かぶヴィジョンのこの大きさこそ、オーストラリアならでは、かもしれない。
運ばれてきてとどまる香りの世界
香りの装いにも、”それが自分のもとに運ばれてきてとどまっている”ような感覚のものと、”大きな世界に入り込み、包まれている”ような感覚になるものとがある気がする。
前者は、自分を信じて、励ましたいようなとき。あるいはこの楽しい気持ちは自分の中に持ち続けたいような時の装い。
大切な人が自分のために選んでくれた香りは、そっと運ばれとどまっている感覚。
フローラルやシプレー、オリエンタルなどがこういう役割に向いているだろうか。優しさや、あるいは深さ、がこのタイプにはある。
厳然と横たわり、包み込む香りの世界
一方で、世界に入り込み包まれている体感に導かれたときは、心身が解放され、日常の垢が落ち、心の棘も抜ける。安心して、広大な世界に身を預け目を閉じる。
ウッディーやグリーン感のあるマリンノートなどが向いているだろうか。
安心感、そして広さ、が感じられるタイプだ。
Pacific Rock Moss/Gold field&banks/2016
レモンやセージのシトラスとハーバルの清涼感、シダーウッドの深みと落ち着き、柔らかいホワイトムスクなどがまさに「包み込む」体感をもたらす。
それは春の森や、雪景色ではなく、夏の海のキラキラ光るまぶしさに包まれる感覚。
冬の入り口だからこそ、夏の大自然に一時包まれていたい。
香り、思い、呼吸
11月15日がお誕生日の方、記念日の方、おめでとうございます。