ようこそ胸騒ぎ 12月19日〜365日の香水
チュベローズ
月下香〜チュベローズ(tuberose)はローズやジャスミン同様に香り高い花として人気で、独特の甘さは香水にも用いられるファンも多い。
チュベローズを主体にした名作香水はが多いけれど、どうしても苦手な使いこなせない香料というのがあって、それが私にとってはチュベローズなのだった。
No.22とfracas
それゆえに、チュベローズの香りをこんなにも巧みに使うことができるのかと、いつもながらに驚きを持っている見上げる存在がロベール・ピケのフラカ(fracas/robert piguet)である。
チュベローズの香りは、シャネルの22番(
No’22/chanel)にも顕著で、その良い点だけが見事に生かされている。
ただ、22番とフラカのチュベローズの生かし方は少し違う。
非常に言葉にするのが難しいけれど、シャネルの22番におけるそれは、“明るい華やかな第一印象”としての役割が大きい。ピンクの明るい色のドレスを軽やかにまとった笑顔の人と出会ったような印象。
一方のフラカは、全体にシックな装い、かっちりとトレンチコートを着た人の足元を見ると、艶やかなピンクのパンプス、そんなイメージである。そしてもうその後は、ピンクのパンプスの印象しか残らなくなる。
とても不思議な主役の作り方である。
フラカの完璧な意外性
フラカとは騒動とか大きな音をさせる、そういう意味らしい。インパクトや衝撃を伴う出来事。
そこには、トレンチコートだと思っていたら、足元に何とも艶やかな色、一瞬で目を奪われる、そういう意外性も含まれている気がする。
フラカが成功しているのはその主役でありながら意外性をだす演出をチュベローズに託し成功させているところだと思う。
日常を夢が覚えた?
少し話は変わるけれど、以前、夢の中でいつもスマホに入れている目覚ましの音が鳴ったことがあった。目が覚めても、実際のスマホはまだ予定の時間の何時間も前で、鳴ってなどいなかった。
その時にふと、同じようなことの繰り返しの自分の日常を脳内がすっかり覚えてしまって、いきなり“反復しだした”のかと思った。
その当時は何に困ると言う事は無いけれど毎日が無難すぎて、それゆえに、先が見えない〜楽しみが見えない時間だった。だから脳内が毎日を反復する事はとても簡単で、いつの間にか目覚まし時計が鳴りだしたんだと、自戒を込めたそんな空想をした。
騒動はビタミン
よくも悪くも心騒ぐ出来事や騒動、衝撃的な事実。それらは生きていく上でのビタミンのようなもの。そのことで最終的に自分に必要な栄養素を取り込むことができるのかもしれない。
adamsfragrancefamilyのサロンで大事にしていること、ときめく会話、穏やかな風、小さなアハ体験、エレガントな尊重。これも万事が均衡が取れて悩み事のない世界観のように思えるけれど、私が伝えたいのは騒動や事件や問題に対してそれらを解消するようなときめく会話が持てること、自分を見失わない穏やかな風を感じられること、どのような出来事も小さな体験として発見や気づきを得られること、そしてすべての出来事、すべての関わりにリスペクトを持てること、起こったことを尊重できること、そういうことなのである。だから、騒動が起こってはいけないのではない。騒動はできれば楽しみたいし、できれば味わいたいし、そのことで“さっきよりも”少しでも成長した自分になっていて欲しい。
fracs/robert piguet/1948
ロベルピゲの香水は、今に続く名作が多い。
ずっと話してきた通り、チュベローズを特徴にした甘くシックで多層的な世界観を持つフローラルノート。
楽しい騒動、そんな予感をさせてくれる。
香り、思い、呼吸
12月19日がお誕生日の方、記念日の方、おめでとうございます。