1000年ぶりのアップデート 11月11日〜365日の香水
Per fmum 焚香料・薫香料
月並みだけれど香りの世界は進化し続けている。
その歴史の始まりは、人類の火の使用とともに始まったとよく言われる。
芳香性の植物を火にくべることで、芳香は増し拡散することを発見し、
それが焚香料や薫香料になり宗教儀式で神への捧げものにされた。
香水を意味する英語のperfumeやフランス語のparfumの語源はラテン語の「per fumum~煙を通して」である。
Oil、Balm 香油・香膏
やがて、獣脂や植物油に芳香物質を移した香膏や香油が登場する。
持ち運びができるようになり、同時に人が直接肌につけて使うことができるようになった。
医療にも、そして自己演出にもこれらは用いられた。
数日前にも書いたけれど、ツタンカーメン王墓の発掘品の中には、アラバスターの容器に入った香膏もあった。
alcoholic perfume アルコール性香水
中世にイスラム社会で蒸留器が発明され、ワインを数回蒸留した結果アルコールが生成されると、植物を蒸留してエッセンスを抽出し、それをアルコールに溶かして用いることができるようになる。
これが現在に続くアルコール性香水である。
アルコールは万能の霊薬と当時はみられていた。
alcohol free アルコールフリー
20世紀後半以降、アルコールフリーという試みが始まる。
芳香物質は水溶性ではないため、アルコールに溶解する必要があったけれど、より肌に優しく、肌への刺激に配慮したフレグランス、アルコールフリーの香水類も特にこの十年で開発が進んだ。
アルコール以外の媒介に芳香物質を溶解する。
アルコールの代わりに、としてグリセリンやプロパンジオールといった溶剤や乳化剤が使われるらしい。
媒介の素材臭や香りの持続性、様々な技術で課題を克服し市場に登場した。
香水とは芳香物質をアルコールに溶解したものという1000年以上続いた定義が変わろうとしている。
ある意味、香油の時代への回帰、古代ローマで試みられた花の芳香水(薔薇やユリなどを水に浸して、微かな香りを楽しんだ)への回帰ともいえるし、その時には解決できていなかった課題(素材臭や持続性)を解消した1000年後の進化ヴァージョンと言えるかもしれない。
Soures1/Hermetica/2018
フランスの新興ニッチブランドであるエルメティカの第一号がこのソース1。
特殊技術によりウォーターベースの香水を製造している。方向物質の分子の取り出し方の領域なので、合成香料の貢献も大きいと推測している。
ボトルにも再生ガラスを使用している。
肌にも環境にも優しいプロダクトと言える。
ソース1は、そのほかのエルメティカの香水のまさに「出所」となっている。これを礎として、ブランドのラインアップが次々に誕生している。
香水は作品ごとに処方を組んでいくという20世紀までの常識とは全く異なる創作哲学。
とはいえ、何かのアコードを他にも転用するということは昔からあったこと。それをラボラトリーの中のことにせず、そこに脚光を当てたことが革新的だと私は思う。
香水という概念、完成品という概念が変化している。
すべての変化にはソース~出所、源泉がある。
1がたくさん並ぶ今日は、源泉に触れて、歩き出す日なのかもしれない。
香り、思い、呼吸
11月11日がお誕生日の方、記念日の方おめでとうございます。