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ささやき 3月13日〜365日の香水

ソフィア・グロスマン
好きなアーティストを聞かれて、その名を口にしたことが何度かある。音声配信の「音の香水図鑑」でも特集を組んだ。
尊敬もそうだけれどやはり「好き」と言う感覚だ。
気がつけば「好き」と思える香水がたいてい、ソフィア・グロスマンの調香だったのだ。ホワイトリネン(white linen)、トレゾア(trésor)、パリ(paris)、キリがないけれど、どれもがトレンド史に名を刻む作品、ある香調を考える上で重要になる作品であることに驚嘆する。
それと知らずに保管していたラウラヴィアジョッティのソトヴォーチェ(sotto voce)も彼女の作品だった。
イタリア語のsotto voceはsoft  voiceつまり囁く声と言う意味。


母音の無声化
第三者に聞かれないように話すことをささやくというけれど、音声学上は母音を無声化して話すやり方であるという。確かに意識はしてないけれど、母音の時に無声化が起こるのかもしれない。
ここに書き留めるのは、母音の無声化を調香に置き換えてみたいと思いたったからだ。

さて、ささやき、ささやくと言う言葉は聞かれないためという注意心もそうだけれど、密かに相手を何かに誘うような雰囲気を持っている。
聴覚ならささやき、嗅覚なら匂わせ、だろうか。
耳元で囁かれて「聞こえないから大きい声で言って」と言う反応はまず起こらない。
母音の無声化された言葉を間近に吹き込まれたら、自然と声の意図に沿って、“そちらの方へ”気持ちは誘われて行きそうだ。
ワクワクするようなものでも、危険なものでも。
これもまたコミュニケーションの一形態なのかもしれない。

sotto voce/laula biagiotti/1996
フルーティノートを格調高く仕上げたトップノートはソフィアグロスマン“らしさが明確に出ている。
トレゾアに通じるような柔らかいスイートさ。そこにスパイシーウッディが早くも立ち上がってくるけれどあくまで控えめに、だ。
ヘリオトロープとバニラのラストノートも軽やかさを残して微かなスパイシーウッディが単調になることを巧く回避させて、いい感じのラストノートが続く。
新しさと懐かしさ、ワクワク特集ヒソヒソが香りの流れの中で展開していく。

香り、思い、呼吸。

3月13日がお誕生日のかた、記念日のかた、おめでとうございます。



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