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負の歴史を超えたクリエイティブの力 11月29日〜365日の香水

メゾンを変えた香水
サンローランのオピウム(OPIUM/YSL)について、過去にもいくつかNOTEを書いた。
モードの帝王といわれたイヴ・サンローランのメゾンを語るうえで”香水オピウム”はその核となるような存在。
サンローランの革新性ともとめた優雅さと、1970年代に視野を広げたエスニックなファッション、様々な要素を終結させてこだわりぬいて誕生させた香水であり「メゾンを変えた香水」と言われているのだ。

阿片を超えて
今なら阿片の意味であるオピウムというネーミングはアウトのはず。
薬物への法規制、たとえアート性で訴えても社会は受容しないだろう。
奇跡的にサンローランのオピウムは”市場”にも”史上”にもその名を刻み特別な認知を獲得して、今に続いている。
当然、香水としての成功が、名前の変更という事態を免れたのだろう。
香水オピウムという独自の、別の世界の存在として受け入れられている要因は、香りの革新性とサンローランというデザイナーの軌跡、刻まれた歴史にある。”阿片”を超越した”香水オピウム”という存在になったのだ。

歴史を超えて
発売当時は、このネーミングは物議を醸し、また阿片戦争を想起させるとして、この香水を侮辱と受け取った中国では不買運動も起こったという。
前のNOTEに書いたけれど、サンローラン美術館で視聴できるドキュメンタリーによれば、中国での反感に対しサンローランはとてもナーバスになっていて、中国でのコレクション開催に際しても不安を抱いていたという。
ところが、訪れてみると熱狂をもって迎えられ、見せたことのないような安堵の表情を浮かべた、という。
これがブランドの力、クリエイティブの力。
美しいもの、エレガントなもの、人を喜ばせるものをクリエイションしていると社会も人々も知っていたのだ。
オピウムは暗い歴史をも乗り越えた。

その価値観
挑発的で反道徳的なネーミングではあるけれど、その世界観は東洋の神秘や、歴史の深淵、異文化への畏怖、それらから見出す美にある。
日本の印籠をボトルデザイナーのピエールデュナンが見つけてきたとき、その用途や外見に興味を持ち、美しい朱色を香水ボトルでも再現しようと何度も納得する朱色に出会うまでGOを出さなかったというサンローラン。
彼の中国、日本、インドやトルコなどにインスパイアされたデザインに通じることだけれど、そこには異なることへのリスペクトがある。
リスペクトに基づく美だからこそ、人々は理解し見惚れることができるのだ。

OPIUM/YSL/1977
オリエンタルタイプの名香の一つだけれど、大胆に斬新にスパイシーノートを使っていることが特徴であり、スパイシーオリエンタルの源流として位置する香水でもある。
語るよりも体感してほしい、独特の不可思議な世界観、オピウムの世界観がそこにある。

香り、思い、呼吸。
11月29日がお誕生日の方、記念日の方おめでとうございます。

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