おひつじ座
星座が持つ香り、を手掛かりに連想しながらまた香りに戻る星座シリーズの5回目。出典はマックス・ジャコブ『占星術の鏡』。
はじまり
12星座は確か牡羊座からスタートする
牡羊座の香りもまた歴史をさかのぼった時、人々と香料の関りの原風景に存在していたようなラインアップであることが面白い。
それは没薬、色彩は深紅という。
救世主を象徴する香料
香料の歴史を紐解くと古代より珍重された香料として乳香と没薬があげられる。旧約聖書に祭壇に捧げる香りの処方として乳香、没薬が明記されている。古代エジプトでは神殿で焚かれ、ミイラの防腐にも用いられた。
キリストの生誕に際し黄金ととともにささげられたのが乳香と没薬であった。これらは、ともに北アフリカに産する低木の樹脂。
乳香がデリケートな甘さを含むのに対し、没薬はビター感を伴う。
乳香は神に捧げられ、没薬は医療に用いられた、このため乳香は神、没薬は医師、転じて救世主を象徴するとされてきた。
実際は両方とも宗教儀式にも医療にも用いられてきた。
そもそも、植物の樹脂は外敵や何かの理由で傷ついた時に、自己を守るために分泌されるもの。
心の救済、没薬のすっきりした香り立ちとビター感には、彷徨う心に一つの道筋をつけてくれるような役割があるのかもしれない。
誠実な批判
確か『インサイト』(ターニャ・ユーリック著)に書かれていたことだけれど、他者に向けられた言葉には3種類あり、それは「無関心な称賛」「悪意の批判」「誠実な批判」という。誠実な批判は相手の成長を思えば出てくるもの、迎合してその場をしのいでいても相手のためにならない、保身を捨てて一時辛い思いをしても、長期的にみて相手のためと思うことを伝える。
没薬という香りを引き連れるおひつじ座は、誠実な批判者なのかもしれない。
盲目の詩人の見た夢
「オシアンの夢」という香水がある。オリザルイルグランからリリースされている。オリジナルは1900年で、マリーアントワネットのお抱え調香師だったジャンルイジ・ファジョンの後継者の香料商によるものだ。
さてこの香水のモチーフになったオシアンは中世の伝説的な盲目の吟遊詩人。オシアンがどんなことをうたったのか、私にはわからない。
香水についての音声配信で最初に扱ったのがオシアンの夢だっだ。
香り自体は樹脂様のいわゆるバルサミックな香り、スパイスも効き、ウッディな落ち着きもある。この配信の中で私は「自分のために、自分を確立させたい日に使う」ことをおススメした。
自身のよき誠実な批判者となり自己を成長させていく・・・
それが、香りから連想したおひつじ座の人。