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女神の分人 豊穣、愛、戦争 9月14日〜365日の香水

アナイスアナイスの思い出
キャシャレル(cacharel)のアナイスアナイス(anaisanais)のことは一度書いた。

そして、もう一つ、名前は出していないけれどアナイスアナイスに関連するnoteが下記。

今はない、日本で初めてと言っていい香水専門店アミドパリ。昭和初期の輸入ビジネス、しかも女性が起業した事業だった。
初対面で、創業者の桐生さん(その時はお名前は存じ上げなかった)が少しの会話の後で「あなたに似合う」と言って見せてくれたのがアナイスアナイスだった。
既にインターンをしていたから、この香水のことは知っていた。
たくさんの選択肢の中で、香りの世界の雲の上のような存在の方に、コーディネートしていただいた香水、今より一層感慨深い。

女神の名前
アナイスとは女神の名前。インド、イランの神話ではアナヒタ(anahita)の名で肥沃、豊穣、純潔を司る女神。
農作物や家畜の庇護者で、生命維持に関わることからか、知恵や癒しの神格も持っていた。
やがて、メソポタミアのイシュタル(ishtar)と同一視されるようになり、イシュタルの持っていた愛、戦争という神格も備えていく。
アナイスアナイスの説明に、戦いの女神の名前からとか、豊穣の女神からとか、情報が錯綜するのはこういう経緯からだ。

神格も分人
時々書いているけれど、分人主義ということを考える時、アナイスの例のように神話の世界から既に、私たちは分人化していたのだと思えてくる。
人はたった一つの分離不可能な個なのではなく、関係性(相手、環境、状況)の中で違う自分を生きている。
違いは明確なものから微妙なものもあるだろうけれど、いずれもさまざまな文脈の中で「自分は常に同一」ではあり得ないということ。
アナイスも豊穣や肥沃、知恵、愛、それらと一見相反する戦争を司っている。
友人といる時、仕事の時、いろいろな分人が自分の中にあるけれど、どうせなら自分が好きな分人のシェアを大きくしていきたい、分人主義にはそういうメッセージがあったはず。
愛情深い人がいるのではなく、その文脈の中で、愛情深いその人がいる、ということ。

anais anais/cacharel/1979
現代香水史上、一つのエポックメイクになった香水。
同じ年にバルマンから出たイヴォアール(ivoire/balmain)同様、高級なソープ様の香気である。イヴォアールはそれを清々しいグリーンと若干のウッディにいったが、アナイスアナイスは、瑞々しい繊細なホワイトフローラルで仕上げた。
清楚で慈悲深く、豊かな実りに静かな微笑みで応えるような感覚の香り。

アナイスアナイスの雰囲気
清潔感や楚々とした雰囲気、凛々しさ、勝手にそのような雰囲気をこの香水に重ねる。
それはアミドパリですすめてもらった20代の私でも、歳を重ねた今の私が持っていてもいい空気感だと思う。というか、やはりそうありたいと思う。

香り、思い、呼吸
9月14日がお誕生日の方、記念日の方、おめでとうございます。

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