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言えないミッション 12月4日〜365日の香水

使うことのない言葉
この香水の存在は、研修生の頃、とにかく香水に詳しい先輩の一人から教えられた。
クランデスティンという名前で認知してきた。
クランデスティン(Clandestine)とは何だろうと、あらためて調べると”(違法性のある)秘密の行動”、”諜報活動”などを言うらしい。
そして、諜報活動といわれれば想像はつくけれど、自分でこの言葉を使う機会はない、と思った。
よく聞く言葉でも生涯使わない言葉というものがある。
調べた限りではClandestineには、国家機密にかかわるような水面下の行いと、違法性のあることをこっそりするようなことと、その意味も両極のようで面白い。

言葉と香りの出会い
それがニュースの記事の中の言葉ではなく、香水の名前になった途端に、同じその言葉が、抗いがたい魅力や、格別さを含んでくるから不思議だ。
反道徳、あるいは少しの後ろ暗さがるニュアンスの言葉を香りの世界に持ち込んだとたんに様相が変わるのだ。
今年私は、感情シリーズとして「たぶらかす」「ほのめかす」「しめだす」「わざとらしい」を創作した。
”香りをすごく気に入ったけれど「たぶらかす」というネーミングが・・・”と、お客様を困惑させてしまったこともあった。
それぞれに、煌めく思いがはいっていたのだけれど、香水が香りと名前とボトルの総合芸術であることを、あらためて認識できた出来事だった。

Clandestine/Guy Laroche/1986
調香師はダニエル・モリエール(daniel moliere)で、過去の紹介でいえば、カルティエのサントス(Santos de Cartier /Cartier)やジバンシーのアンサンセ(insense/ginenchy)などがあり、特にアンサンセはメンズフレグランスの現在に続く潮流を作ったエポックメイクといっていいから、多作ではないけれどインパクトのあるワークをした人と言える。
明るいフルーティとバラエティ豊かなフローラルはスイートでパウダリック、パチュリやムスク、アンバーも香りに深みを与えながら、どこまでも優美さを称えた香り。

クランデスティンな香りの場面
思わせぶりなネーミングとは裏腹に「後ろ暗さ」がなく、穏やかな品格に包まれたような香りと一緒に、誰にも予定を告げず、SNSからも離れて、近くても遠くても初めての場所へ。
何者でもなく、時間も気にせず。
そんな隠密行動の一日、あるいはそれは物理的なものではなく心理的なものでもいい。
それがクランデスティンの場面と思う。

香り、思い、呼吸
12月4日がお誕生日の方、記念日の方、おめでとうございます。


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