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現実と夢、過去と未来を行き来する 1月2日~365日の香水

オシアンの夢
今日の香水はオリザ・ルイ・ルグランのオシアンの夢(REVE D'OSSIAN/ORIZA L.LEGRAND)。
数年前に音声配信をした時の第一回に取り上げた。
偶然だけれど、年末年始に読んでいた小説にこの香水が登場した。
ブルゴーニュを舞台にした小説には、いくつかの香水や小説、映画、音楽が登場する。
それらは、作中人物たちを立体化していくような役割があった。
知らない音楽や映画もあったけれど、それでもそれらの”コンテンツ”がテキストを映像化する一助になっているかのように、世界を深め臨場感を増していた。
喪失と再生を行き来する時空
オシアンの夢の使われ方が中でも印象的だった。
それは主人公の導師となるような人物が使っていたものとして登場し、ハンカチーフやタオルにオシアンの夢が吹きかけられ、家を訪れるとその香りがそれらから漂うというものだった。
主人公の喪失と再生の物語の中で、オシアンの夢の香りが漂う家は、喪失の物語に寄り添い、再生への力をゆっくり蓄えさせるような役割を果たしていた。
この家にオシアンの夢以上に相応しい香りはないような気がした。
バルサミックな香りは失望と希望を行き来しながら新しい時間に気持ちを向かわせるのに、この上ないと思った。
溶け合う過去と未来
過去と未来、喪失と再生、失望と希望、これらはどこかで一度溶け合って、互いが互いを凌駕することなく、融和してから徐々に変容していくのだと思う。喪失を否定せず、失望を拒否せず、一度受け止め、徐々に再生と希望の色に変化していく。
フローラルでは希望しか見えないし、グリーンやウッディではナチュラルに過ぎて痛みが感じられない、バルサミックなノートが行き来する場、溶け合う場には一番ふさわしい。
REVE d'OSSIAN/Oriza L Legrand/2012
マリーアントワネットの調香師であったジャンルイファジョンの系譜にあたるオリ・ルイ・ルグランのメゾンが実業家により復刻したことを知って、サンジェルマンデプレのブティックを訪れた時、出会ったのがオシアンの夢だった。
いくつも香りを試しながら、最後に選んだ乳香や没薬の香りが活かされた独特の香調。
古来、日本人が沈香に感じてきた幽玄をヨーロッパの人々の場合はこういう香りに感じるのかもしれない、そんなことも思った。
どこか異空間へ誘うような香り。
オシアン
オシアンは古代の伝説的な盲目の吟遊詩人。伝説上の人物だけれど、実在したのではと近世にブームになったらしい。
オシアンの夢とは、伝説の詩人がみた夢なのか、あるいは詩人が夢に出てきたということなのか。
いずれにしても、オシアンのような夢、それは現実と幻想の行き来、夢の中と夢の外の行き来ではないだろうか。
皆様の初夢はどんな夢でしたか?
香り、思い、呼吸
1月2日がお誕生日の方、記念日の方、おめでとうございます。
オシアンの夢が登場した小説はこちら


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