威信 11月12日~365日の香水
威信にかけて
「威信にかけて」、という気持ちで何かに臨んだことはありますか。
名誉、プライド、何かのための行動も、威信なのか名誉なのか何かによって受け取る時のニュアンスも変わる。
威信の英語Prestige(プレステージ)は車やマンションなどでよく耳にする。この言葉はラテン語の「praestigium(幻覚や幻影)」や「praestigiae(手品)」に由来するという。
実態がないものがもともとだったのに、物件など有形な価値のブランディングに使われているのが面白い。
威信と威厳
威信という言葉には、社会的から認知・評価されているというステイタスがあり、それは成し遂げたことに基づいている。
勝者の威信とか、名門の威信とか。
親い言葉だけれど威厳(Dignity)は内に宿るもの。成果や実績をしらなくても、その中に高潔さ気高さを感じることができる。
威厳に満ちたまなざしとか、門構えに感じる威厳、とか。
音に威光、畏怖の念を抱いた演奏
先日、ジャズピアニストの上原ひろみさんの生演奏を初めて聴いた。
実はあまり存じ上げないまま、友人に誘われて行ったのだけれど、その演奏は音に威光がさし、好きとか楽しいとかではなく、私はピアニストに尊敬の念、畏怖に近い念を抱いた。
聴く人に圧を与えるわけでなく、それでも一音一音で圧倒していく。
ライブで彼女が示した実績、聴衆に与えたインパクト。
初見からたった二時間ほどという”実績”で、私は上原ひろみさんという演奏家を信頼し畏怖の念を覚えたのだった。
即興性が一つの妙であるジャズの世界、その中で証明される力。
その存在をこれまで知らずにいたのが不思議なくらいの夜だった。
内的世界と外的世界のセッション
その演奏を聞きながら、プレステージ~Prestigeという言葉が過った。
ディグニティ~Dignityでもオーソリティ~Authorityでもなく。
人々や社会の信頼の上に成立する力、それを裏切らない力、それは名誉ではなく誇り。
ピアニストの内からだけ発せられるものではなく、聴衆との相互信頼によって生まれる威光の時間。
内的ものと外的もののセッションが威信のステージになるような気がしていた。
JAZZ prestige/Yves Saint Laurent/1993
1988年に登場した「JAZZ」はメンズフレグランスの集大成のような重厚でシックでドラマティックな香りだった。
それから5年、ジャズプレステージは、ラベンダーやモスを基幹にしながらシトラスやグリーンでユニセックスに寄っている。軽いとは違うけれど、透明度を増した香調。
私的にはJAZZのような無形のアートに”プレステージ”と冠したことがこの香水の好きなところ。
それは幻影のように形をとどめることはないけれど、いつまでも心に残り続けるもの。
香り、思い、呼吸
11月12日がお誕生日の方、記念日の方、おめでとうございます。
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