軽薄 7月17日~365日の香水
重くて暑いVS軽くて薄い
「言葉に重みがない」「考えが薄っぺらい」軽くて薄いことは、あまりいいことではないのだろうか。
軽さには「重い腰」に対して「軽いフットワーク」のように、ポジティブな面もある。薄さには「薄い雲」(空模様)や「薄浅黄」(色彩)のようにバリエーションの一端として良し悪しではなく取り扱われることが多い。
さて、重いと厚いを合わせた「重厚」は、ポジティブが強い。
彼は重厚な感じの人、部屋の重厚感のある誂え・・・
軽いと薄いを合わせた軽薄はというと、軽薄な人、軽薄な考え、軽薄な行動・・・
数式でいえば、重い、厚いはプラス、掛け算しても足し算してもプラス、
軽い、薄いはマイナス、何してもマイナス、という感じだろうか。
軽薄は英語ではfrivolous、フランス語ではfrivole。
その語源はラテン語のfrivolus、意味は「とるにたらない」ということでやはりネガティブ。
もともとは、friareという言葉から派生していて、これは細かくする、粉々にするという意味。
軽く薄くすることは、ものを細かく粉々にしていくことでとるに足らないものに帰していく、そういう思想。
モノで考えれば、お皿が割れて粉々になれば確かに役に立たない。
分解、単純化VS複雑系
一方、概念的だけれど錬金術師のプロセスはこの世を形作るものを見つけるまで細かく細かく解体していくというもの。これは原子、素粒子の探検に世界に近いと思う。
分解して細かくしながら本質を見つけたい、という思考とは別に天候や自然界の営みなど複雑なもの、法則性がないもの、因果関係が見つけずらい世界を複雑系というそう。
何かの分析の時に、細分化せず、単純化せず、複雑なまま省察することも時には大事だと思う。
香水は複雑系
香水を形作ることを考えれば、そのことが説明しやすい。
ジャスミンを入れたからよい香りになるわけではない。
一つ一つの素材の濃度、配合比率、それだけでなく、ターゲットや価格、リリース時期、そして装う人によって「形」の価値は変わる。
良い形は、何か一つの原因に帰することはない。
諸相の要因の重なりが「その形」をつくる。それは分解したり特定せず、複雑なまま受け止めることが大事と思う。
Frivole parfum/Fragonad/2012
直訳すると「取るに足らない香水」。
老舗ブランドのネーミングと思えない遊び心。匂い立ちのストーリーはシトラスから入り、ジャスミンやミュゲにシャクヤクが特徴のミドル、ベースノートもイリスとムスクでかなりド真ン中の配合。
それでも平凡にならず、ケアレスミスを犯さず、複雑系として品のある優しい香りになっている。
真夏だけれど、ちょっとご褒美的に使いたいパルファム。
香り、思い、呼吸
7月17日がお誕生日の方、記念日の方おめでとうございます。