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天才 11月24日~365日の香水
稀代の天才
LVMHを率いるベルナール・アルノ―が「天才」と明言しその才能に一瞬で心奪われたというデザイナー、クリスチャン・ラクロワ。
アルノ―は天才ラクロワと出会い、ディオールやシャネル、サンローランのようなブランドを買収ではなくゼロから築けると確信したという。
装飾的でバロックやベルエポックの時代性を醸し、アーティスティックでありながら刺繍や縫製などには職人技を行使した精巧もあったデザイン。
現在は舞台衣装のデザインを手掛けるラクロワは、1987年にアルノ―会長の支援のもと自身のブランドを創設しコレクションを発表した。
天才はデヴューと同時に世界に認められた。
才能だけでは
そこまでほれ込んだ天才を手放したのは2005年のこと。
LVMHはラクロワの事業を売却した。
「才能だけでブランドを築くことはできなかった。ブランドには伝統が必要だった」とアルノ―はこの時言葉を残した。
ブランドは誕生して、成長して、定着して伝統を築くのだから、この言葉の理解は何とも難しい。
言えるのは、「時代」を味方にできたかどうか。
シャネルもディオールもみな「時代を味方」に付けた。
芸術性と商業性
ラクロワの贅沢で手の込んだデザインは、1990年代の後半から2000年代において、オートクチュールの市場とはフィットしなくなっていた。
市場のニーズに合うもの、かつブランドが生き残るための採算性、商業主義と彼の芸術至上主義は反比例していったようだ。
アレキサンダー・マックイーンやマルジェロのドキュメンタリーがあるようにいつかラクロワのストーリーも映像化されないだろうか。
天才の軌跡をオークション系のECサイトではないフォーマットで残したい。
今、映像や画像を探し出して観ても、心が惹きつけられるクリエイション。
ワクワクして、完璧で、それでいて排他性がなく、「ああこの世界で遊ばせて!」と思わせてくれる。夢があふれているデザインだ。
「彼はピカソのように大胆だ」とは、ある歴史家の言葉。
それが人生~C’est la Vie!/Christian Lacroix/1990
ボトルは心臓を象ったもの。
フローラルオリエンタルの香りはトップノートがフルーティでやがて花々の甘さの世界に移行し、ウッディやバニラ、オリエンタルノートが混然と溶け合い、夢想の世界へと誘っていく。
夢うつつ、それが人生と言っているかのよう。
調香師はディオールのプワゾン(poison/Dior)を調香したエドワードフレシェ(edouared flechier)。
プワゾンに感じた幻想的な世界観が、セラヴィでは夢想へと舞い上がったよう。
香り、思い、呼吸