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盗まれることない宝物 11月3日〜365日の香水

貴重なもの
ラテン語のthesaurus(テサウルス)は“貴重なもの”の意味でこれが英語のtreasure(トレジャー)、フランス語のtresor(トレゾア)になった。
古代から、金やエメラルド、ダイヤモンドのような宝石、乳香、没薬などの香料、シルク、鉄器あらゆるものは貴重なものであったので、時代や地域で宝として扱われた。
これらのほとんどは今でもお宝と言える。

イワンの国のダイヤモンド
トルストイの「イワンのばか」では、労働に価値をおくイワンを苦しめようと悪魔がイワンの国の人々にダイヤモンドをばら撒く。最初はダイヤモンドに群がっていた人々だけれど、一巡すると興味を示すこともなく、欲することもなくなる。
飽きたのではなく、キラキラ輝いて美しい“おもちゃ”は、一個あれば十分で、もっともっとという欲望にかき立てられることがなかったのだ。
悪魔の目論見は見事に失敗する。

価値とは興味
ダイヤモンドによって人々が堕落することはなかった。
晩年のトルストイの思想や労働賛美がこのベースにはあるようだけれど、常識や他者の価値観に惑わされず、さらにダイヤモンドの価値を知らずに、人々が飄々としている感じがとても面白かった。価値を知らないというより、興味がないという感じ。
貴重なものの成立要件は、希少性だけでなく、求められているかどうかとの掛け合わせなのだ。

セカンダリーマーケット
アートの世界でも、心動かされたかどうかではなく、セカンダリーマーケットを視野にコレクションする傾向が一定ある。
そうなってくると、「みんなが良いと思うもの」ではなく、「みんなが将来大きな価値を生むと予想する」ものに人気が集まり、人気が集まるので実際に価値が高まっていくような奇妙な現象も起こる。
資本主義は、芸術への真贋を曇らせているのかもしれない。

生成A Iの語った宝
ChatGPTに「一般論ではなく、宝に対するあなたの定義を教えて」と言ってみた。
家族や恋人との思い出の品、伝統や文化的な遺産、自然の景観や美しい場所、知識や学び、記憶に残る香りや音楽と回答が出た。
ChatGPTを使っている方がいたら同じ質問をしてみてほしい。もちろん、平準化された回答が整えられてくるけれど、長く使っていると私との会話が蓄積されるので、部分的にカスタマイズされている回答があるのがわかり、自分を再認識できる。
知識や経験は盗用されることはあっても、自分の中から失われることはない。
当たり前のことだけれど、この回答は私の宝だ。

tresor/lancome/1990
フローラルオリエンタルの中心に存在する香水。
フルーティなトップノートを大人っぽい雰囲気に仕立てるのは調香師ソフィア・グロスマンの卓越した技術としか言いようがない。
ピーチオレンジのイメージカラー、オーガンジーを重ねたような質感。
ミドルからの華やかなフローラル。
心の中の宝物を見つけた日に。

香り、思い、呼吸
11月3日がお誕生日の方、記念日の方、おめでとうございます。

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