「傷つけない」曲線と膨らみと ニキ・ド・サンファル 10月29日~365日の香水
ニキ・ド・サンファルとの出会い
このアーティストのことを知ったのは香水が先だった。
ニキ・ド・サンファルの香水はその名を冠した一点だけ。後にこのアーティストを好きになるのだから、貴重なコレクションになった。
おそらくはシンガポールのショッピングビルでニキ・ド・サンファルのフレグランスコーナーが目に飛び込んできたのだった。ボトルはどれも美しいコバルトブルー、そのこと以外どんなブースデザインだったか記憶がない。
パルファムとオーデパルファムを買ったけれど、その時の後悔は、二匹の蛇が施されたブレスレットがボトルの装飾にもなっているヴァージョンを買わなかったこと。
閉館したニキ・ド・サンファル美術館
現代彫刻家ニキ・ド・サンファルの鮮やかな発色とふくよかな、そしてどこかユーモラスな表情の作品。
かなり前に、東京でも展覧会が開催されていたけれど、作品をまとめてみる機会はあまりない。
パリでは、パリのポンピドゥーセンター近くのストラヴィンスキーの噴水、オペラバスティーユのロビーなどで見つけることができた。
2011年に閉館した那須にあるニキ・ド・サンファル美術館は故・増田静江館長のニキへの思いの詰まった空間だったので、一度は訪れてみたかった。
原体験と現体験のリンク
増田さんは50歳の時にたまたま訪れたギャラリーで虫干ししていた一枚のニキの版画に出会い、心を貫かれたという。
ニキの作品には増田さんの言うように「作者自身を感じる」部分と、鑑賞している自分自身を見出す部分がある。
ニキの原体験と鑑賞者の現体験が重なるような感覚。
傷つけない創作
アートセラピーがきっかけでアートの道に入ったニキ。攻撃的で破壊的な初期の作品から、よく知られる豊満な女性「ナナ」のシリーズなどへと作風は変化していく。
テーマはマイノリティや女性解放、社会問題を扱うものなのに、見る側を疲弊させないのは”豊満さ”、丸みや膨らみによるのかもしれない。
「丸いもの、ウェーブが好き」といい「尖ったものは嫌い」と言っていたという。難からかの問題定義であっても”傷つける”結果になるようなクリエイティブはしたくなかったのかもしれない。
Niki de saint phalle/1982
パルファンエキストレのボトルはニキが好まなかったスクエアで上部に絡み合うカラフルな二匹の蛇を冠している。実は調べた限り、他のタイプのボトルはみな角がない楕円であった。
香りは深みのあるシプレーでベースのムスクやアンバーとハーバルなトップノートはクラシカルな構造と言える。
ニキの晩年のプロジェクトであったトスカーナのタロットガーデンのための資金繰りとして「ナナ」のフィギアを作り主にアメリカで販売したというが、香水もそういった資金繰りやプロモーションの一環だったという。
今日、10月29日は彼女の生まれた日。
香り、思い、呼吸
10月29日がお誕生日の方、記念日の方、おめでとうございます。