「クリスマスの夜」の香水
12月25日 定番の発信
毎年、キャロンのクリスマスの夜という香水を12月25日にSNSに投稿している。私のコレクションは2008年にパリのモンテニュー通りにあったキャロンの本店サロンで入手したもの。今は、廃盤になったらしい。
クリスマスの夜nuit de noelという名の香水はこのほかに知る限りでもう一つ、別のブランドから出ていた。
キリスト教文化圏ではクリスマス休暇は年間のハイライトイベントだ。
一度、サクレクール大聖堂でクリスマスイブのミサに参加した。荘厳さと隣人への愛、人類への慈悲の気持ちというものを、異教徒の私でもひしひしと感じ、敬虔な気持ちになる二時間だった。すべてが終わると、見ず知らずの隣人同士でハグをする。あの時にハグした人たちは元気でいるだろうか。
1920年代のクリスマスの夜
さて、「クリスマスの夜」という香水は濃厚なオリエンタルにスパイシー感が走るこの季節にこそ味わえる深い香りだ。
最初にリリースされたのが1922年。
第一次世界大戦が終わり、つかの間の華やかな平和な時期を欧米の人々は味わっていたはず。グレードギャッツビーで作中人物たちがパーティに明け暮れていたような時代。女性のファッションはポールポワレやココシャネルらの台頭でウエストを締め付けない身体を開放したファッションとショートカットの流行。19世紀的なものはすべて葬り去られ、世界は自由と平和なムードに満ちていた。
30年代に入るとアメリカの恐慌の影響や、ドイツでのナチスの台頭など世界はまた黒い予兆をはらみ始めていくから、20年代というのは本当につかの間の心躍る時代だったのかもしれない。
「クリスマスの夜」が世に出たのはそんな時代だった。
クリスマスの夜のときめき
この香水を調香したエルネスト・ダルトロフには生涯にわたるパートナーがいた。
そのせいか、「クリスマスの夜」というネーミングのこの香りに家族と過ごす暖かいイメージよりも、傍らにいるパートナーへのときめきを感じとってしまう。
ポールポワレのローブ式のドレスに羽織る毛皮、古代ギリシア風のヘッドアクセサリー、ある人はシャネルのエレガントなのに動きやすいカクテルドレス、シャンパングラス、スマートなエスコート、女性もできる喫煙、クリスマスの夜の外出、そんな光景が浮かぶ香りだ。
濃厚で豊潤な香り、100年前のクリスマスの夜に思いを馳せたい。
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