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1月25日の香り~意外な展開~366の感性と偶然

1月25日 アンバーとイランイラン

アンバー(amber)
正式名称はアンバーグリス(ambergris)といいアンバーは琥珀、グリスは灰色なので、見た目が灰色がかった琥珀のようだったことに由来する。
現在はアンバーグリスの天然香料は幻のような存在。
合成香料で代替されるようになって久しい。

東方見聞録と龍の涎伝説
マッコウクジラの結石のようなものが体外に排出され海上を浮遊していたものを拾った誰かがいたことでアンバーグリスの歴史は始まる。
マルコ・ポーロの東方見聞録にもインドから南方500海里の島に「アンバーグリスを求めて寄港した」との記述があり、漁のあとで、獲物のマッコウクジラを解体して体内からアンバーグリスを取り出した、という記述がある。実際に彼が立ち会ったのか、アラビア商人から聞いた話に過ぎないのか、はわからない。
少なくとも12世紀には西洋社会ではアンバーグリスの出自は明らかだったことがわかる。
一方、アンバーグリスの別名は「龍涎香」。この香りは中国でも珍重された。付加価値をつけるためにアラビア商人たちが中国市場用に、仕立てた名前だろうか。
龍の棲む深海、眠る龍の涎が海上に浮上したもの、という物語がつくられたようだ。
以前これについては少し書いた。

幻の資産
私は天然のアンバーグリスを知らない。
いくつかの香料会社では重要な資産として金庫に保管をして保険もかけているかもしれないけれど、大半の従事者にとっては偉大な幻でしかない。
余計なお世話だけれど、これを有していても(希少すぎて)使うこともできないのに、資産価値はそれなりに高いのだから、財務を圧迫してそう。

意外な展開
今日使ったのは、「アンバーグリスの特徴をもっとも有している」とされている有名な合成香料。
合わせたのはイランイラン。前者が3で後者が7の配合。
イランイランは東南アジア原産でフルーティな強い花香を持つ。
トップノートはこれ以上ないほどに濃厚だが、その妖艶なオリエンタルの予想は裏切られ、ミドルはイランイランを中心にアンバーはそこに落ち着きや深みを与えていく。最後はドライダウン。
全力で誘惑、と思ったら・・・意外にも「落ち着いて会話を楽しもう」という展開。

香りの戦略~クレオパトラのように
それはまるでクレオパトラがカエサルにだまし討ちのように謁見した作戦のよう。献上されたくるくる巻きにされた絨毯をほどくと、中から出てきた一糸まとわぬエジプト女王。
勇気と機智に喝采をもらったら、ゆっくりと冷静に、カエサルを自分の味方に引き入れていく。
このアコードの展開は、とても戦略的で、そしてやっぱり妖艶。

香り、思い、呼吸
1月25日がお誕生日の方、記念日の方おめでとうございます。

1月25日の香水はこちら


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