ロマン主義と阿片 8月29日~365日の香水
メゾンを変えた香水
サンローランのオピウム(opium~阿片)については過去何度かNOTEに書いた。
1977年に登場し「メゾンを変えた香水」という言葉もある。
今日はそこから20年ほど経過して、唐突に登場したオピウムの男性用(プールオム pour homme)について考えたい。
1995年、にわかに登場
20世紀までは女性用が出て男性用が続く、という香水の登場パターンが少なくなかった。あまり間を置かずに。
オピウムは女性用が1977年、男性用はそこから18年経過して登場した。
イブサンローランは、自身のメゾンからリリースする香水についてもコンセプトメイクに関わっていた。
2002年に引退し、事業を売却する前の時期なので”あのオピウムの男性用”を出すということについても、思いがあってのことと推測する。
オピウムこそメゾンの誇りとして、それを揺るぎないものにするために、男性用が不可欠だったのかもしれない。
阿片ということの女性的イメージ
阿片戦争という歴史的事実があって、当初イブサンローランのオピウムが世に出た時は中国市場で不買運動が起こるなど、強烈は反感を買ったという。
いい加減なことは言えないけれど、半世紀近くを経て、この歴史的な名香は、いまだにメゾンの中心であり、“香水から想像される阿片”を甘美で、幻惑的で、個性的なものに塗り替えた。
媚薬のような香水。
阿片ということの男性的イメージ
では、そのメンズラインとは?
19世紀にロマン主義が文学の世界で花開いた時、詩人や作家が阿片の影響下で創作した作品がままあった。
『悪の華』のボードレール、ロマン主義の影響を受けたアポリネール、エドガー・アラン・ポーはしばしば阿片中毒になった人物を描いている。
こういったロマン主義の中で描かれた世界、それが男性的イメージ、男性側面の“オピウム”かもしれない。
女性は麻薬のように幻惑的で、抗いがたい神秘を称えた存在。
翻弄され、破滅的な美、ロマンに耽溺する男性、そんな関係性なのではないだろうか。
OPIUM pour homme/YVES SAINT LAURENT/1995
調香師はジャック・キャバリエ(Jacques Cavalier)。
スターアニス、ペッパーなどのスパイスにオリエンタルノート、プールオム(pour homme〜男性用)は、よりバルサミック。それが瞑想のような雰囲気を出している。
シンプルだけれど精巧で深い。とはいえ、濃厚というわけではない。
今の時代だと、メンズチックな感覚もない。
90年代的なバランスの良さがある。
香り、思い、呼吸
8月29日がお誕生日の方、記念日の方、おめでとうございます。