キートン 2月5日〜365日の香水
kiton for men /kiton/1996
清潔感があってライト。
ソープ、シャワージェル、バスルーム、そういうものを想起させながら香水としての格を持っている。
わかりやすくいうと一定の高級感がちゃんとある。
女性用でソープ系ならバルマンのイヴォアール、男性用でシャワージェル系なら、このキートン フォー メンもその一つと言えると思う。
90年代以降、メンズフレグランスは明確にライトになり、フローラルに傾き、ユニセックスになっていった。
今は女性用、男性用の境界線も消失した。
(賛同してる)
1996年にリリースされたkiton for menも男性用となってはいるけれど、始終シトラスが支配しながらヴァイオレットやスズランなどが柔らかく匂い立っている。シプレーノートはこの頃からだいぶ様相を変えてきている。光の届かない森の奥の光景を思わせる燻したようなノートは、もっと明るく軽くなっている。
(ジバンシィのアンサンセが起点となったこのシプレーノートのアップデートは、本当に興味深い)
そういう今に続くピースを全て備えて、この香りは世に出たということになる。
え?
これも、ありがたいことに「勉強用」にといただいたものだった。キートンというブランドを知らなかったのもあって、この香りのことは、あまり学んでいなかった。驚いたことに、検索するとebayなどで500ドルくらいの価格で出ていた。
え?である。
もちろん、オークションに出すことはないけれど。
匂いの記憶
どんなに高級な香水でも逃れられない運命がある。
日常に無数に浮遊する芳香物質の何か一つと関連付けられてしまうことだ。
ソープ様の香気を部分的に捕まえると、その香水はたちまち”その人の家の石鹸”の匂いと結びつけられる。前にも書いたけれど、少しのプラムを嗅ぎ取られて「のし梅」と言われてしまった高級香水もあった。
人は解釈しようとすると、当然、日常の中の自分の経験を引き合いに出す。もちろん、香水の経験もその中の一つだけれど、人はもっと身近なもの、触れる機会の多いものを引き合いにだす。
最初にソープ、シャワージェル・・・のような話を言ってしまったので、それもで”香水”であるゆえに漂うラグジュアリー感のことを、どうしたら伝えられるだろう、ずっと考えながら書いた。
ちなみに、冒頭にふれたソープ、シャワージェル、バスルームのうち、清潔でラグジュアリーなバスルームの香りというのは、ウビガンのフジュールロワイヤルを想定した。私が知っているのはもちろん復刻版のほうだけれど。
歴史に名を刻むものでさえ、なのだ。
だから、あらためて、香水を解釈しようとせず味わってほしいと願う。
香り、思い、呼吸。
2月5日がお誕生日の方、記念日の方おめでとうございます。