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古代ギリシア女性からのエール 11月20日~365日の香水 

マドレーヌ現象~古代まで追想
今日は、冷気が心の裡まで侵食しそうな朝だった。
手の甲に一吹きしてみた香りは、これまでの記憶と微妙に異なり、
郷愁と慰めに満ちていた。
それはとてもたおやかな匂い立ちだった。
大げさだけれど、今ここに私が存在しているのは太古から紡がれていた生命の一端。
NOTEにもよく書く古代文明から近現代までの出来事も人々も遠い世界のことではなく、今や私につながっている。
そんな思いを生じさせてくれた。
とても大きなマドレーヌ現象のようだ、と勝手に思う。

※マドレーヌ現象(プルースト現象とも)
プルーストの『失われた時を求めて』の主人公がマドレーヌの香りから一気に過去を追体験していくというくだりから、嗅覚が体験記憶を呼び覚ましていく現象をこう呼ぶ。

古代ギリシアの人形 タナグラ
今日の香水は「タナグラ(tanagra)」。
タナグラという存在を今回初めて知った。紀元前5~3世紀くらいに古代ギリシアの都市国家タナグラのあった地域から18世紀にたくさんの小型のテラコッタの人形が出土した。そのまま、タナグラと呼ぶようになった。
少しここで、どのようなものかが見れる。

古代ギリシア女性からのエール
女性のものが多いこと、当時の人々の日常が伺われるものであること、に興味を抱く。
歴史は「特記事項」が記録されるというけれど、「常日頃」を人形として残そうと思った発想の中に生きることへの慈しみが感じられる。
お守りのような役割、埋葬品、役割は明確にはなっていないという。
香水「タナグラ」を一吹きした時に、画像でしか知らない古代ギリシアの人形タナグラを通して、2500年前の女性たちの息遣いや声、笑顔さえ立ち現れたような気がした。人形の「日常観」がそれに一役買ったのかもしれない。
みんなが私を応援してくれているような気持になった。

タナグラは18世紀に発見され、ヨーロッパではブームになり多くの富裕層がコレクションをしたという。
古代人の肩ひじ張らないナチュラルな風情が共感を呼んだのだろうか。
私もいつかこの目で観たい。そして、語りかけてみたい。

Tanagra/Maison violet/2018
メゾンビオレの調香はベテラン、ナタリー・ローソン(Nathalie Lorson)によるものが大半。
ここの香りはどれも好きなのは、「私が(現在市場に出ている)香水で好きだなと思うものがナタリー・ローソンによるもの」という事実と帰納法的に帰結する。
芍薬や洋梨、フリージア、このあたりはこの調香師が本当に巧みに使いこなすいつもながらの感心領域。柔らかく懐かしく優しいだけでなく、ベチバーやシダーウッドが重なりや落ち着きを与えてくれる。
古代ギリシアの女性たちが香りを通して「美しくあれ!」と言ってくれているよう。

香り、思い、呼吸
11月20日がお誕生日の方、記念日の方、おめでとうございます。

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