格別な普通 11月14日~365日の香水
一年前の今日に、伝説の近代香水「王室のシダ~Fougere Royale」について書いた。
フゼアノート
香水のタイプや香調を言う時に「フゼア」という用語がある。
この「フゼア」は「fougere Royale」という香水が由来になった言葉。
Fougereはフランス語で「(植物の)シダ」を指す言葉。
1882年にその名を冠して登場した香水の新機軸性、それはうわかりやすく言うとハーバル、シトラス、モッシーに草の甘さのような特徴を掛け合わせたものだった。この”草の甘さのような”香調を出すために、”クマリン”が使われた。桜餅の葉のような香り、というとわかりやすいだろうか、クマリンは近代香水史上初めて使用された合成香料とされる。
王室のシダの時代背景
この香水を世に出したウビガン(Houbigant)はフランス革命前の1775年の創業なので、この時点ですでに創業100年を超えていたことになる。
ナポレオン三世が英国に亡命し、フランスが三度目の共和制をしいたのが1870年だったから、国民国家としてリスタートのさなかに「王室のシダ」と冠することは、特異に感じる部分もある。
王政の末路、復古王政の失敗、憎悪の感情も残っていたかもしれない。
ロワイアルとは
おそらく、ここでのロワイアルは、現実的な特定の王室をさすのではなく、王室というものが持つ特別感や格式、そしてその時代においてもよかったこと、文化や価値観への懐古さえ込められていたのかもしれない。
発想、デザインとは組み合わせ
そうなると、「王室の薔薇」「王室の花束」「王室の庭園」という方が言葉としては釣り合う。シダはひっそりと目立たない、モブのような存在でもある(シダ、ごめんなさい)。
そこに、このネーミングの妙があるのかもしれない。
組み合わせ。
格別なバラや格式高い庭園は、その通り過ぎてひっかかりがない。
ロワイアルにシダを組み合わせることで、「シダでさえも格別な世界」「別格のシダという存在がある世界」という非日常感が醸されてくる。
実に何気ないようなネーミングの中に、今に通じる発想の妙、組み合わせ方の奥義が見える。
Fougere Royale/Houbigant/2010
伝説となったフジュールロワイアルは今も続くウビガンによって2010年に復刻された。
先に考察した組み合わせの妙でいえば、ラベンダーやベルガモット、モッシーという特別感、天然香料の中に、クマリンという合成香料がシダの役割を果たしたのかもしれない。最も、当時は開発され、使用が試みられ始めたばかりの合成香料の方が特異な存在ではあった。
正統派紳士の身だしなみを整えるためのような香りは礼儀正しいバスルームを思わせる。
バスルームの鏡に向かって身づくろいをする。
日常であり、普通のことの中に格別さが宿る。
香り、思い、呼吸
11月14日がお誕生日の方、記念日の方おめでとうございます。