最初の存在、最上位の存在 11月21日~365日の香水
ヴァンクリフ&アーペルの思い出
今日の香水については一年前くらいに書いていた。
シンガポールのラグジュアリーな宝石店での思い出。
時間が経過しても断片的に鮮やかに蘇る場面。
書いた通り、白い手袋と柔らかい布、丁寧に~宝石のように扱われたパルファムエキストレのボトル。
ファーストということ
カウントとしてのファースト、ファーストクラスやファーストレディという時のファーストがあるように、香水「ファースト」のネーミングは文字通りヴァンクリフ&アーペルの「最初の香水」という意味もあるし、「最高位の香り」ともとれる。
公式サイトではヴァンクリフ&アーペルの最初の香水であると同時にジュエラーが手掛けた最初の香水でもあるとなっている。
記憶の限りだけれど、確かにこれが「ジュエラー初」だったかもしれない。
ヴァンクリフ&アーペルの香りの展開
「0」という無にたいして、存在していることの概念の始まりが「1」になる。
このブランドの香りの戦略は2010年代頃から、「コレクションエクストラオディネール」に整えられた。
それまでは、宝石や創業者にインスパイアされたテーマやデザインが多かったけれど、このシリーズから統一規格のボトルで、テーマを「良質な素材」に一貫させて展開している。365日のNOTEでは、この両者を過去に紹介した。
そして、「コレクションエクストラオディネール」にラインが整った後も、「ファースト」だけはボトルデザインを変えることなく存在している。
まさに、最初の存在であり、何があっても最優先される存在、なのだろう。
First/Van Cleef&Arpels/ 1976
スパイシーでパウダリーなフローラルがアルデハイドで活き活きと開花する。カーネーションやヒヤシンス、イランイランなどだ。
ベース部分は、動物性香料のシベットやアンバー、シプレー要素、ウッディ、バニラと複雑でありながらとてもまとまりがある。
名門宝石商の風格、歴史を香りで表現する
このジュエラーが植物や小動物をモチーフにしてきた創業からの歴史を考えると、”最初の香水~First”は、輝く宝石の豪華さではなく、自然界の活力や自然への愛おしさを表現したかったのだと考えられる。
だからオリエンタルタイプやシプレータイプではなく、アルデハイドタイプを選んだのかもしれない。
若き日のジャン・クロード・エレナ(Jaen Claude Ellena)は、ブランドの風格や歴史からくる重厚感をオリエンタルやシプレーによる濃厚さではなく、アルデハイドとフローラルの緻密な構成によって表出させた。
天才はすごい。
前にも書いたけれど、エルメスでの彼のワークは「軽やか、(優れた)薄さ」が際立ったけれど、それらとは一線を画す名作。
香り、思い、呼吸
11月21日がお誕生日の方、記念日の方、おめでとうございます。