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なぎさまちのカナダ人(サミット2016)

「なぎさまち」のカナダ人
202304202346   2016年伊勢志摩サミットのお話(その1)

 あれからもう7年になる。
 空港連絡船の港である「なぎさまち」(*1)の待合室にあるテレビからはオバマ米国大統領(当時)の演説が日本語同時通訳とともに流れていた。現職米国大統領の歴史的な広島訪問はしかし皮肉なことに、2016年伊勢志摩サミットが今までのサミットより日程が少なくなる理由となりまたプレスを始め世界の目はサミットより大統領の広島訪問あるいはその先の米国新大統領選挙の行方に向かうこととなった。
 テレビの同時通訳者には申し訳ないがその訳はあまり日本語になっていなかった。いくら私の英語力はひどいとはいえ演説の生の声を聞いている方が理解が早かった。たぶん同時通訳者も事前にその演説の草稿を手に入ることが出来なかったのでは、と思う。

 待合室でそのテレビを熱心に見ていたのは私一人ではなかった。欧州系と思われる若い男性も一緒に見ていた。聞いたところによるとサミットとは関係がなくて親戚を空港まで迎えにいくフランス系カナダ人だとのことだった。
 テレビを見ながら私が
"Have you ever been to Hiroshima?"
と聞くと彼は
"Yes"
とうなずいた。僕が続けて
"We, Japanese forget what did we do at the World War II in China mainland"
と言うと、彼は即座に
"Different generation! "
と返してきた。でも、本当にそうだろうか、と私は思った。

 次の空港行き高速船が桟橋に入って来た。乗船案内が待合室に流れる。
 彼は船に乗り込んで行く。私は大きな声で桟橋から言った。
"Au voir, Monsieur"
 返してくれた彼の笑顔はしかしすがすがしかった。

*1)「なぎさまち」は三重県にある中部国際空港との空港連絡高速船用の港。

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