足立浩志がTikTok規制について考察
いつもは「世界の産油国」のニュースを考察している足立裕志が、番外編として「TikTok規制」について考察します。
“六次の隔たり”という仮説をご存知でしょうか。
この説によると世界は思いのほか狭く、たった6人を介すると世界中の誰にだって突き当たることができるのです。
そう、例えば政治家とは無縁の私が、トランプ大統領に辿り着くことだって。
このほど、アメリカ政府が「安全保障上の懸念」を理由に、中国のByteDance社が開発運営するモバイル向けショートビデオのプラットフォーム『TikTok』の利用禁止を検討していることが、7月6日のFoxニュースの取材で明らかになりました。
取材に答えたポンペオ国務長官は「中国共産党に個人情報を渡したい人にはお勧めだ」とも話しています。
実はTikTokの利用禁止を検討している(または実行している)国は米国が初めてではなく、このニュースに先駆けて、6月29日にはインド政府が既に中国製の59製品のモバイルアプリの使用禁止を発表しています。
理由は、「インドの主権と一体性を害する活動に関与している」というものでした。
また、新型コロナウイルスの国際調査を巡り、中国側が拒んだことによって対立が激化しているオーストラリアは、TikTokが「中国政府とユーザーの情報を共有している可能性がある」として利用の禁止を検討。強気な対抗姿勢を見せ続けています。
貿易面での軋轢など他の問題も多発するオーストラリアの私的感情はさておいても、このTikTok規制、われわれ日本人にとっても油断ならないニュースなので注意したいところです。
政治家の親族なんていないからと安直に考えるのはやめましょう。
そもそも、中国では『国家情報法』に「全ての組織と国民は、国家情報機関の求めに応じ協力しなければならない」という条文が定められており、TikTokは必要に応じて中国情報機関からの要請に従う“義務がある”、可能性が低くはありません。
『国家情報法』と言えば、先のHUAWEI問題が記憶に新しいのではないでしょうか。
これは、それまでも実しやかに囁かれていた「HUAWEI製品にバックドアを仕込んで中国政府の意のままに米国や同盟国の情報を諜報しているのではないか」という疑惑のことですが、2020年現在もけっきょく晴らされていないところから察するになかなか手強い法律なのです。
第一条で「国の情報活動を強化、保障し、国の安全と利益を守ることを目的とする」と断り、第七条で「いかなる組織及び個人も、法律に従って国家の情報活動に協力し、国の情報活動の秘密を守らなければならない」と義務付けられています。
強固な中国共産党下にあっては、いくら大企業と言えどもこの法律を守らないわけにはいきません。
今回も、TikTokを運営するByteDance側は「中国政府とは距離を置いている」とのコメントは出しているものの、 AmazonやWells Fargoなど、従業員にTikTokユーザーの多い企業はアプリケーションの削除を促すなど、冷ややかな反応。
アメリカ国防総省は2019年末の時点で、国から支給されているモバイルデバイスにTikTokがダウンロードされている場合、削除するよう米軍関係者全員に指示を与えています。
日本政府や自民党内でも、こうした報道を受けて、TikTok利用者の個人情報が中国に流れる素地があるとの懸念を強め、情報漏洩の危険性が高いアプリケーションの調査要請を進める方針としています。
今や、インターネットは生活の必須ツール。
特に未曾有のコロナウイルス感染拡大により、フィジカルな交流が制約され、今まで以上にインターネット上でのコミュニケーションが盛んな現在、こういったプラットフォームは若い世代を中心に欠かせないツールになりました。
しかしながら、例えば健康を守るため様々な感染症やウイルスに注意を払うように、個々人がデバイスに忍び寄る危機に対して管理意識を高めていくことも肝要。
来る5G時代に向け、私達は一層のデジタルリスクマネジメントを確立していかなければいけないのではないでしょうか。
出典:アメリカ政府がTikTokなどの使用禁止を検討…中国ではIT系企業のデータも政府のもの?
https://news.yahoo.co.jp/articles/ba64831f0ab2310e54d2ed95ca4def40ce0d2071
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