ふたつの岩

いま海面上に二つの岩が突き出ているとします。その二つの岩は、その大きさも違っていればその形も違っています。明らかに両者は異なった二つの岩であり、誰もそれを同じ岩だとは言わないでしょう。

しかし、これを海底から見たらどうでしょうか？

海底から見れば、この二つの岩は繋がっています。最初、二つの違った岩と見えたものは、実は同じの岩の二つの部分であることが分かります。

実際、満潮のときには二つの岩に見えたものが、潮が引いてくると同じ岩の二つの部分であったという経験を誰もが持っていると思います。

したがって、問題は私たちがどの視点からものを見るかにかかっていると言えるでしょう。海面から上だけを見れば二つの異なった岩が存在すると言えますが、これを海底から見れば、あるのは全体としての岩で、最初、二つの岩と見えたのは実は一つの岩の二つの部分であったことが分かる。

 幸福と不幸、安心と不安、成功と失敗、生と死・・・。

私たちが相反すると思っているこれらの言葉も実は視点を変えて人生の根っこから見れば相反する言葉でなく、むしろ互いに互いを支えあう言葉と言えるのかもしれません。

よくよく考えてみれば、例えば「幸福」という言葉は「不幸」という言葉がなければ存在できません。同じように「不幸」という言葉は「幸福」という言葉がないと存在意味がないですね。