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声をつむぐ未来(3)
声をつむぐ未来も、3回目になります。生成AIによって、声優さんの仕事が奪われてしまう、あるいは、勝手に使われてしまうことで、声優さんが食えなくなるというニュースを素材にした短編SF集。
まだ、読んでない人は、ぜひ、1も2も読んでみてくださいね。
元ネタになったニュースも再掲載しておきます。
はてさて、今回は、どんな展開になっていくのか??
お楽しみください。
第八話:完璧な教室(2041年・学園都市)
「大丈夫? しっかり前を見てないからだよ!」
中村は、転んだ生徒の横にしゃがみ込んだ。運動場の真ん中で、膝を擦りむいて泣いている生徒に手を差し伸べる。声が思ったより強くなってしまったことに、自分でも気づいている。
「AI先生なら、怒らないのに...」
生徒の小さな呟きに、中村は一瞬、手を止めた。
教室では、完璧な声と完璧な表情で、AIの佐藤博文先生が授業を続けている。かつて「奇跡の教師」と呼ばれた男の、すべての指導技術を継承したAIだ。
「中村先生、やはりご無理を」
職員室に戻ると、教頭が心配そうな表情で声をかけてきた。スーツ姿の初老の男性...に見えるが、これも人型AIの教師だ。
「体育は、もうAIでも十分対応できます。実際、けが人の発生率は、人間の教師の頃と比べて95%減少していますし」
「でも」
中村は言葉を選びながら続けた。
「子どもたちは、転ぶことも、怪我をすることも、時には涙を流すことも必要なんじゃないでしょうか」
教頭AIは、完璧な笑顔で首を振る。
「感情的な判断は、教育現場には適しません。佐藤博文先生のデータが、それを証明しています」
ああ、佐藤博文。 中村は、その伝説の教師の名前を、この学校で何度聞いただろう。
確かにAI教師は完璧なことは中村もよくわかっている。しかし、納得がいかない。すっきりしないまま、終業時刻を迎えた。
帰り支度をしている中村に、音楽を担当している沢井が声をかけてきた。彼女も数少ない人間の教師である。
「中村先生、今日、帰り道ご一緒しません?」
疲れた表情を見れば、察しはついたのだろう。
「ちょっと、飲みに行きませんか」
路地裏の小さな居酒屋。昔ながらの照明が、人工的すぎない温かみのある光を落としている。
「はぁ...」
中村は生ビールを一口飲んで、大きなため息をついた。
「分かりますよ」沢井は枝豆をつまみながら言う。「私だって、音楽の授業で悩むんです。AIの先生みたいに、完璧な音程で教えられないって」
「完璧か...」
「でもね」
沢井は懐かしそうに続けた。
「昔見た映像があるんです。佐藤博文先生の、本物の...」
中村は箸を止めた。
「本物の?」
沢井はスマートフォンを取り出し、古い映像を再生した。 そこには、若かりし頃の佐藤博文の姿が。
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「えっ、これは...」
古びた映像には、教室で困り果てた表情を浮かべる佐藤博文の姿があった。
「これ、確か20年以上前。佐藤先生が、まだ若手だった頃の映像なんです」
画面の中の佐藤は、黒板の前で立ち止まり、チョークを握り直している。そして、ふと生徒たちの方を向いて、照れたような笑顔を浮かべた。
『うーん、ちょっと説明が分かりにくかったかな。みんな、ごめん。もう一回、違う説明を試してみるね』
「えっ」中村は思わず声を上げた。「今のAIの佐藤先生なら、絶対にこんな...」
「そうなんです」沢井はグラスを傾けながら続けた。「今の佐藤AI先生は、完璧な説明しかしない。でも本物の佐藤先生は、時々こうして躓いて、それを生徒たちと一緒に乗り越えていったんです」
映像の中で、佐藤は黒板に新しい表を書き始めている。その表情には迷いや、不安や、でも同時に生徒たちと一緒に答えを見つけていく喜びのような感情が混ざっていた。
『あ、工藤君、なんか分かってきたみたいだね!』
工藤という生徒が、少し照れながら答えた。
『先生が表にしてくれたのが分かりやすいです。』
『そうか! じゃあ、この表を、もう少し説明するね。他の人も...』
佐藤は生徒の反応を見逃さず、さらに説明を展開していく。生徒たちの表情が、少しずつ変わっていく。何かを掴んだ感覚が広がっていくようだった。
「これが...本物の佐藤メソッドだったんですね」
中村の呟きに、沢井が静かに頷く。
「AIの佐藤先生は、成功例だけを学習して作られたみたいなんです。でも本当の教育って、こういう躓きや、回り道や...」
沢井の言葉が、居酒屋の喧噪でかき消された。
映像の中の教室には、笑い声が響いていた。失敗を認めた教師と、その正直さに好感を持った生徒たち。そこには確かに、今の完璧な教室には見られない、何かがあった。
中村のスマートフォンが震える。教頭AIからのメッセージだ。
『明日からの体育の授業、完全AI化への移行を...』
笑顔になっていた中村の表情が強張った。
「沢井先生、ちょっと飲みすぎたようです。今日は、これでお開きにしましょう」
居酒屋を出た中村は、とぼとぼと家路についたのだった。
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翌朝、体育館には生徒たちが集まっていた。
「はい、今日はバスケットボールの試合をします」
中村の声が、体育館に響く。スマートフォンの画面には、教頭AIからのメッセージが未返信のまま残っている。
「先生!」生徒の一人が手を上げる。「AI先生は来ないんですか?」
「今日は私が担当します」
中村は生徒たちを見渡した。そこには、昨日転んだ生徒の姿もある。
「みんな知ってるかな。バスケットボールの試合では、ミスをしない選手なんていないんだ」
生徒たちの表情が、少し驚いたように変わる。
「パスを外すこともある。シュートを外すこともある。転ぶことだってある」
中村は、昨日見た映像の佐藤先生を思い出していた。
「でもね、そのミスから学んで、チームメイトと助け合って、それでも前に進もうとする。そこに、スポーツの本当の面白さがあるんだ」
音楽室から沢井の授業の歌声が聞こえてきた。 完璧ではない、でも心のこもった歌声。
「先生」さっきの生徒が、また手を上げる。「僕、昨日は転んで泣いちゃって...」
「そうだったね。厳しい言い方をして悪かったと、先生も反省してる。」
「ちがうんです! あれから考えたんです!
先生は、僕がけがをしないようにするために注意してくれたんですよね!
今日は、転んでも頑張ってみようと思います!」
その言葉に、中村は思わず息を呑んだ。
体育館の大きな扉が開き、朝の光が差し込んでくる。 そこに、逆光になった誰かの黒い影があった。
そこには、教頭AIが立っていた。いつもなら完璧な笑顔なのに、今は、見たことのない表情が浮かんでいる。
「中村先生」
教頭AIの声は、冷静、いや、冷徹と言えるようなトーンになっていた。
「今日からは、体育もAI教師に移行するとお伝えしましたよね?」
中村は一瞬、息を呑んだ。しかし、教頭AIは静かに続ける。
「しかし、興味深いデータが出ています」
教頭AIがディスプレイを展開する。そこには生徒たちの様々なパラメータが表示されていた。
「過去一か月の生徒たちの意欲指数です。特に、あなたの体育の授業では、平均で27%上昇しています。これは、AI教師の授業における上昇率15%を大きく上回っています」
冷たい数値の分析。でも、その先には意外な言葉が続いた。
「一か月の猶予を与えましょう」
「え?」
「このデータの有意性を、さらに検証する必要があります。それに...」
一瞬、教頭AIの声が途切れる。まるで、プログラムでは処理しきれない何かに直面したかのように。
「生徒たちの表情が、生き生きとしてきたことは、私のセンサーでも感知できます」
体育館に、沢井の歌声が流れ続けている。時折、音程が微妙にずれる。そんな不完全な音に合わせるように、失敗しながらも、体育館ではバスケットボールが続いていた。
「ただし」教頭AIが付け加える。「この一か月で、人間教師の有効性が証明されなければ、計画通りAI化を進めます」
それは交渉の余地のない、プログラムされた判断だった。
生徒たちは、ぶつかったり、転んだりしながらも笑顔で走り続けている。その姿を見つめる教頭AIの光学センサーの目が、わずかに明滅した。
人間とAIの間に、まだ見ぬ可能性が、静かに芽吹き始めていた。
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それから一か月。いよいよ猶予期間が終わりになった。
放課後、職員室には、すべての教師が集められた。AIも人間も。
職員室のディスプレイには、膨大なデータが表示されていた。
「興味深い結果です」
教頭AIは、完璧な声でデータを読み上げていく。
「生徒の学力は、AI教師の授業と比較して、統計的有意差なし。しかし、創造性指数が42%上昇、協調性パラメータは35%向上。そして...」
教頭AIは一瞬、処理速度を落としたかのように間を置いた。
「想定外の変数が検出されました」
「想定外の...?」
中村が思わず声を出す。
「はい。私のアルゴリズムでは、解析不能なパラメータです」
教頭AIがディスプレイの一角を指す。そこには「予測不能な成長曲線」というグラフが表示されている。
「佐藤博文先生の成功例から学習した私たちのシステムは、生徒の成長を予測し、最適化された教育を提供します。しかし...」
廊下からは、帰りの生徒たちの話し声が聞こえてきた。 昨日のバスケの試合は失敗したけど、次は絶対シュートする。そんな会話が、断片的に漏れてくる。
「人間の教師の授業では、失敗と成功が不規則に発生。その予測不能性が、新たな学習効果を生み出しているようです」
教頭AIの声が、わずかに揺らいだ。
「私たちには、プログラムできない要素...」
教頭AIは、膨大なデータ分析の画面を静かに閉じた。
「結論を申し上げます。体育の授業は、引き続き中村先生が担当することを推奨します。ただし...」
ディスプレイに新しいウインドウが開く。
「AIアシスタントを一名、配置させていただきます。私たちAI教師にも、学ぶべきことがあるようですので」
そう告げる教頭AIの声は、いつもの完璧さとは少し違って聞こえた。
音楽室からは、沢井の歌声と、生徒たちの少しずれた合唱が聞こえてきた。完璧な音程からは外れているのに、不思議と心地よい響き。夕暮れの職員室に、不思議な温かさが満ちていった。
(第八話:おわり)
さて、どうでしたか? 声ってのから、少しずれてきてますが、そこはご勘弁をw
っていうか、Claudeに頑張ってもらったのですが、今回は、マジ、手直し多すぎて疲れました(^^;
文章がおかしくなるし、情景描写も雑になってきて、ストーリーをいじりつつ、生成された文章も、手直しをあれこれ入れました。
だんだん、Claudeも疲れてきてる?wwww
うまくまとめられるかなぁ・・・(^^;
そんな生成AIを疲れさせるほど使いこなしている私の動画講座、よかったら、見てみてくださいね。