第七話:ポイントは「同時多発的」な気づき。"効く"記事体広告(タイアップ広告)は「伏線ー回収構造」で構成されている
前回、記事体広告(≒タイアップ広告)を制作する際にも、通常の広告制作と同様にまずは「What to say」を定めてから、「How to say」つまり具体的な記事の執筆に入るべき。そしてWhat to sayは具体的にはUSP設定とそれに基づくタグラインの設定という二つの作業によって定めることができ、記事体広告においてはタグラインは最終段落の見出しに置かれるべきものであるという話をしました。
今回は、その定めたタグライン(=記事の落としどころ)に向けて、その前段の記事はどのように構成すべきかという点について考えてみます。
記事体広告(タイアップ広告)の構成とは
記事体広告とは、文章によって生み出す新たなブランド文脈によって消費者の態度変容を促すものです。よって、記事体広告の要はこの文脈を生み出す「構成」そのものであるといえます。どれだけタグラインが優れていても、途中で離脱されたり、意味のない情報を並べるだけであれば前段の文章をつける意味はなく、むしろそのままタグラインのメッセージをバナーで露出したほうがマシです(同じ広告費でリーチは100倍とれるし)。
構成の基本はリード・本文・締めの3階建て
記事だからといって、ダラダラと書いてはいけません。何度も言いますが、「態度変容」というただ一つの目的のために記事体広告の全ての文字は存在するわけです。その目的を達するための構成の作り方はいくらでもありますが、基本は「リード・本文・締め」でシンプルに作るのが一番簡単かつ確実だと思います。
リード文は記事全体の「つかみ」
リード文とは、記事冒頭の200-400文字程度の導入文です。ここの役割は、記事の「つかみ」。読者は同じメディアでも、1記事ごとに記事への向き合いを変えます。最初のリード文で「この記事は自分にとって価値があるかないか」を判断し、数行読んで引っかかるものがなければ離脱します。
私がリードがいかに大事かに気づいたのは、記事体広告のリピート率を上げるために成功した案件の分析をしていた時のことです。記事体広告のパフォーマンスを上げるKPIの一つに「読了率」がありますが、成功する記事は概して読了率が高いです。メディアにもよりますが、平均が40-50%程度のところ、良いものは70-80%になります。メディア時代に平均40%程度の読了率を70%に上げるためにあれこれ分析したのですが、そこで分かったのが全体の離脱の半分はリード部分で発生しているということです。よって、リード部分の離脱を抑えられれば、読了率は40%から70%に上がるのです。
離脱率が少ないリードは同時に、本文中でのアクション(=クリック)を促進する効果もあります。リードによって読者に「この記事は何かありそうだ」と期待させ、その先の本文でその期待に応えることで読者のアクションが最大化します。そのようなリードを作る秘訣は読者の「パーセプションの更新」を促すことなのですが、これは別途詳しく記事で取り上げます。
本文で読者の脳内に伏線を張る
第三回目の記事「NG例から考える、良い記事体広告(タイアップ広告)とは? 」において、読者は広告と分かって記事体広告を読み始めるが、「分かってて、騙されてやる」という態度であると述べました。よって、本文だからと言って思いっきり商品の機能紹介を始めると読者はドッチラケ状態になって離脱してしまいます。
本文のあるべき距離感は、商品はチラチラ出てきているが、あくまで読者の問題点についての一般論提示がメインという建て前を守っている状態です。もちろん提示される内容は最終的に商品に落ちるので恣意的なものですが、まあ一般の編集記事だって編集方針に沿った恣意的なものですから。
本文の役割は、締め段落で商品が出た時に最も好意的に受け入れることができるよう、読者の前提意識・知識を整えることです。つまり本文中で「伏線」を張って、締め段落で一気に「回収」する。漫才で言えば本文が「ネタフリ」で締めが「オチ」になります。前段がないと感動も笑いも生まれないので、本文中で読者にあらかじめ与えておく情報は極めて重要ということです。商品ベネフィットから「商品」だけ取り去って、一般論としての「ベネフィット」への共感を2-3ポイントとっておくことで、読者の脳内に伏線を張ることが本文でやるべきことです。
「伏線ー回収構造」による「同時多発的気づき」が態度変容を生む
リードでキャッチし、本文によって伏線となる前提意識・知識を埋め込まれた読者を一気に態度変容に持っていくのが、記事の締め段落です。前段で「これもいいな、これも納得」といくつか共感をとっておいて、それら全ての要素を1つで賄えるもの=訴求商材という打ち出しにすることで複数の伏線が同時に解消され、「同時多発的」な気づきが生まれ、一気に態度変容まで持っていくことができます。
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