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何者でもないが、何者でもある

よく「今はできないが、いずれできるようになる」と言われるように、
できないけれど「できる」と言い続けることで、
相手からの期待を先に受け取り後からその辻褄を合わせていくような
コミュニケーションが存在します。
実際私自身も未経験から広告業界に飛び込み、
右も左もわからない状態で経験をスタートしました。
ただ過去を振り返るとただ「イラストを描くのが好きだ」という思いだけでこの世界に入ったのです。今思うと数々の幸運が重なり自分の身を置く場所を選べ今の会社に所属できるご縁をいただき、今日に至っています。

しかし、あの当時の私は「何者でもない」存在であり、
何ができるのか本気で探しながら取り組んでいたと思います。
すべてが経験だという思いで、掃除、アシスタント、お客様対応、そして制作など、会社で起こるすべてのことに対応してきました。
この先それが意味を持つかどこに繋がるのかはわからないまま、
ただ目の前のことに全力で取り組み続けてきました。

やがて気づけば会社の中で「何者か」になり、
さらには社会の中でも自分が何者かになったような錯覚に陥っていました。次第に驕りや傲慢さが現れ、
謙虚さを失っていったのです。
自分自身にフォーカスしすぎると何が起こるのか?
それは他者との隔絶です。
自分と他者の違いを強調し上下関係や左右の区別をつけ、
間違った世界観を自ら作り出してしまう危険性があります。

「何者かになりたい」と思えば思うほど、
その実、自己満足の世界に閉じこもり遠ざかっていく。
残念ながら、広告業界においてはクライアントがいて、
私たちがいる。
そしてクライアントの先にはさらにお客様がいるのです。
それを見失い自己陶酔してしまうのは、あまりにも滑稽です。

さらに、自己成長や自分にフォーカスすればするほど、
その思考が知らぬ間に自己中心的になり、
考え方そのものが自分を侵食していきます。
人間とは時に利己的で矛盾を抱えた存在であり、
今日の発言と明日の考えが変わってしまうこともある。
だからこそ常に「今」を正しく見る目や意識を養う必要があるのです。

その気づきを与えてくれるのは、
日々の小さな瞬間や人との繋がりそして謙虚さを忘れないことかもしれません。自己成長や何者かになることを追い求める過程で、
しばしば周りが見えなくなり、
自己満足の世界に閉じこもってしまうことがあります。
しかしふと立ち止まって考えると、
私たちがどれだけのものを周囲の人々から受け取り、
支えられているかに気づく瞬間が訪れます。

結局のところ、「何者でもないが、何者でもある」という言葉が示すのは、自分の存在を絶対視するのではなく、
流動的であることを受け入れることの大切さです。
私たちは他者の期待や支援、時には批判を受けながら、
その都度形を変え、成長していくものです。
だからこそ、常に「今」を正しく見つめることが重要であり、
自己満足ではなく他者との共感や相互理解を通じて自分を形成していくべきなのです。

広告業界においてもクライアントやその先のお客様がいるからこそ私たちの存在意義があり、
その期待に応えるために努力する必要があります。
自分が「何者か」になりたいと考えるのではなく、
他者の期待にどう応えられるかを考えることが本当に「何者か」になるための道だと感じます。

日々の謙虚さと周囲との繋がりを大切にしながら、
これからも自分を成長させていきたい。
自分自身も感じた今日のことを忘れず日々を過ごしたいと思う。
これこそが私たちが本当に目指すべき姿なのだと
改めて感じた今日この頃です。

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