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拝啓、いつかの私へ #1

魔王を倒して平和になった世界の勇者
閉店した飲食店のスタンプカード
写真アプリに数年前から残っているスクショ

かつては必要とされたのに、いつの間にか誰からも必要とされなくなったモノが世界には数多くある。

私だって小学生の頃は両親から大切にされて、学校の先生からも期待されて、自分を価値のある存在だと思っていた。
学校で時々書かされた【いじめ調査アンケート】にも、ずっとポジティブな回答をしてきた。もちろんその回答に嘘は無かった。

だけどどうだろう。
インターホンの前に笑顔で佇む2人の女性からの「今、幸せですか?」という問いに対する、「幸せですからほっといてください」という答えは迷いと嘘で濁っていた。


「宗教勧誘って本当にあるんだな」
胡散臭いおばさん2人を追い払った私は、またベッドに寝っ転がってスマホをいじり始める。

1人でボーッとSNSを眺めながら、私は頭の中で思考を巡らせる。
〔私みたいななんの希望も無いような人間よりも、自分が信じたいものを追いかけているあのおばさん達の方がもしかしたら幸せだったりして〕
〔いやいやいや   そんな訳ないか〕
〔こういうちょっと病んでる時に人は怪しい新興宗教とかマルチ商法とかにハマるんだろうな〕

人を見下して、自分を落ち着かせる。
これがいつからか私の悪い癖になっていた。
いつもいつもそう。


私はスマホを枕元に置いて、バイトに出勤するまでの数時間を夢の中で過ごすことにした。

難しいことや、考えたら心が辛くなりそうなことは考えない。考えそうになったら寝る。
それこそが、私が人生で身につけた”苦しまずに生きるための知恵”である。



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