拝啓、いつかの私へ #8
ビルから出て、陽向は最寄り駅から帰りの電車に乗る。改札にICカードをかざす手は震えていた。
恐怖とも怒りとも悲しみとも形容しがたい感情が、陽向の中で渦巻いていた。
「あの俳優結婚したらしいよ」
「またこのYouTuber炎上してるよ」
「おばぁちゃん良かったらこの席座ってください」
「お出口は右側です。開くドアにご注意ください。」
いつもは雑音として捉えていた周囲の音が、なぜか今日に限ってとても明瞭に聞こえる。
絶望に打ちのめされた自分とは対照的に、いつもと変わらずに繰り広