認知症の方も、ボランティアさんも、学生も職員も、皆が“ごちゃまぜ”な場所
今回は、京都認知症総合センターにある「カフェほうおう」にお邪魔して、認知症カフェでの ACWA BASE の活動をご紹介します。
「洗濯工房」という名前で、毎月2回ずつ開催中。外部連携の第一弾であるプロジェクトは、どのような思いで始まったのでしょうか。
社会福祉法人 京都悠仁福祉会の田中 まりさんと桝村 雅文(ますむら まさふみ)さん、ACWA BASEを運営する株式会社アグティの代表取締役 齊藤 徹(さいとう とおる)さんにお話を伺いました。
「ACWA BASE って何?」と思われた方は、まずはこちらの記事を読んでみていただけたらと思います。
ボランティアさんが、ご近所にお住まいの方を連れてきてくれるんです
齊藤:社外の方と連携して ACWA BASE をやるのは「カフェほうおう」さんが初めてだったので、僕たちにとっても新しいチャレンジでした。京都府の「認知症にやさしい異業種連携協議会」で桝村さんと名刺交換をさせてもらったのがきっかけですよね。
桝村:「隣のまちに、そんなおもしろい活動をしてる会社があるんだ!」と驚きました。うちでもできひんかなと思いながら、でも最初はやっぱり、ちょっと慎重に喋っていた記憶があります。民間企業のお仕事となると、福祉の世界とは感覚やルールが違う部分もあるじゃないですか。
齊藤:検討いただく際に、どういったことが一番気になりましたか?
桝村:クオリティを担保できるのか、ご利用者さんにお支払いする金額をどうしたらクリアにできるのか、そのあたりですかね。アグティさんからいただいた報酬は、法人には残さず、すべてご利用者さんにお渡しすると決めていたので、お金のやりとりの方法を考えたり。
田中:初回はドキドキしましたね。ネットに分かれて入っている洗濯物を全部一度に出してしまって、「待って待って、混ざっちゃう!」と焦ったのを覚えています。でも、アグティの職員さんがていねいに指導してくださって、優しさをすごく感じました。こんな風にビジネスをしている企業があるんだって。
齊藤:最初の頃は、職員の方がだいぶ頑張ってくださったんですよね。ばっちり仕上げていただいて、ありがたいです。
田中:今はもうボランティアの方々がしっかりサポートしてくださるので、安心です。知恵を出し合って、臨機応変にやってくださってます。嬉しいことに、ボランティアさんがご近所にお住まいの方を連れてきてくれるんですよ。普段から周りを気にかけておられるんですね。「私も行くねんけど、一緒に行かへん?」って声をかけてくださって。
桝村:デイサービスとかは抵抗があるけど、仕事しに行くならいいかなっていうので来てくださる方もいますね。
仕事があったから、お母さんの持っている力に気づくことができた
桝村:娘さんと一緒に来て、洗濯工房に参加した方がいてね。「お母さん、まだまだできるやん、すごいやん」って娘さんが驚いてはったんです。それまでは、危ないと思って、家事もほとんどさせていなかったと。「できることは、やってもらった方がいいですね」とおっしゃっていて。
二人とも楽になるし、関係性も良くなりますよね。アグティさんの仕事があったから、お母さんの持っている力に気づくことができたんです。
齊藤:めっちゃ素敵なエピソードですね。
田中:お二人で子供食堂のボランティアにも来てくださってます。今日も来られてますね。
桝村:僕たちにとっても、このできごとは大きかったです。認知症の当事者の方も、やっぱり遠慮されるんですよね。失敗してしまうかも、という思いもありますし。でもここは、間違っても大丈夫という前提があります。そういう環境があれば、意外と失敗しないんですよ。周りもサポートするし。
齊藤:そういう場所があるって大事ですよね。
桝村:そう思います。僕たちだって、将来、自分に対して色々不安が出てくるだろうし、想像するとね。
田中:そもそも人って、認知症じゃなくても失敗しますよね。認知症だから失敗してしまうかもって思う必要はないんじゃないかと思うんです。私だって、朝から何回もご利用者さんに注意されてますし。「そこ違うでー」って。
誰が認知症の患者さんで、誰がボランティアで、誰が学生で、っていう立場はここでは関係ないんです、職員も含め。
地域や社会から応援してもらえる会社になる
桝村:齊藤さんに聞きたいことがあって。僕ね、アグティさんみたいな企業が元気になってほしいんです。色んなところでアグティさんの話させてもらってるんですけど、何かもっと僕たちにできることはありますか?
齊藤:ええ!ありがとうございます。おかげさまで、売上もちゃんと昨年より増えています。でも実はもっと嬉しいことがあって、うちに入社したいっていう学生が2人も来てくれたんです。新卒採用の募集をしてないのに。
桝村:それはすごい。
齊藤:ですよね。僕もびっくりしました!学校を通じて連絡をいただいて、慌てて募集要項を作って。企業が社会貢献をする意味って、地域や社会から応援してもらえる会社になることだと思うんです。その結果が、採用や売上に表れる。
でもそれって、効果が測りにくいので、費用対効果で考えると絶対にできないんですよね。
田中:ほんとに、企業さんのお力を借りて、こういう場所がまちに増えていったらいいなと思います。近くの方は歩いて来られますけど、わざわざタクシーに乗って来てくれる方もいるんですよ。どうしても地域格差があって。
齊藤:色んなかたちで拠点が生まれていくといいですよね。家とは違う場所に出かけることってやっぱり大事な気がします。意識が変わるし、そこに仕事があればなおさら、使命感が働くというか。人の役に立ってると思えることが、やりがいにもつながるし。
企業の役割は、お金の循環を通して継続できる仕組みをつくること。福祉法人の得意なことと、企業の得意なこと、それぞれの強みを合わせて地域の中で循環する仕組みを実現したいですね。
桝村:僕たちの業界はどちらかというと閉鎖的なので、ご一緒することで視野を広げてもらえてありがたいです。
齊藤:外部と連携すると、自分たちだけだったら、やらなかっただろうなってことも出てきますよね。それがおもしろい。ちょっとずつ無理もして、分け合って、なんとか続けていこうって思えるのが、パートナーシップなのかなと思います。
田中:「カフェほうおう」を色んな人が出入りする場所にしていきたいので、アグティの社員さんや齊藤さんのお友達にも、ぜひ遊びに来てもらえたら嬉しいです。
齊藤:皆さんとは“ゼロイチ”を一緒にやった仲間なので、また次の何かをゼロからかたちにできたらいいですね。今の活動のカスタマイズかもしれないし、全く新しいことかもしれないし。今後ともよろしくお願いします。今日はありがとうございました!
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田中さん・桝村さんのインタビューはこちら↓
運営:株式会社アグティ
協力:社会福祉法人 京都悠仁福祉会 カフェほうおう
文・写真:柴田 明
\ 久御山のACWA BASE を紹介するリーフレットができました! /
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