はり師きゅう師国家試験合格のための3ステップ
今回は私の考える【はり師きゅう師国家試験合格のための3ステップ】になります。参考程度で気軽にお読みください。
元々、卒後都内の専門学校で国家試験対策の補講を担当していました。当時は1年生から3年生まで受け持っており、今回の記事はとくに3年生の初回講義時に必ず話していた内容となります。
STEP1で勉強の軸と記憶について、STEP2では国家試験の構成、STEP3では試験対策のための具体的なアイデアを紹介しています。
STEP1 効率よりも確実性で選ぶ
多くの学生さんから「効率の良い覚え方はないか」「なにか良い勉強法はないか」という質問をいただきます。そうした質問はきっと成績の伸び悩みや、試験に対する不安だったり自信が無かったりといった気持ちからくるものなんだろうなと感じます。私も受験生だった頃は毎日が不安だったのでよくわかります。
だからこそ最初に大切な話をさせてください。まず重要なのは『勉強は目的ではなく、手段である。』という点です。
何のための目的か。それは国家試験に合格するためであり、その通過点として校内の定期試験や外部模試などがあります。ですので、点数が取れる方法であれば、一見すると非効率的な方法であってもそれで良いと私は考えています。
例えば、成績優秀な人たちはiPadで勉強しているから、高価なテキストで学習しているから、といって同じものを購入しても成績が上がるわけでもありません。(真似することが悪いわけではありませんが。)
大切なのは確実に点数を取る方法です。記憶に定着させる。4択から答えを選ぶ。文字にすればただこれだけですが、実際は『記憶に定着しづらい』『なかなか思い出せない』『4択を絞り込めない』ことが課題です。ここを理解していないと気づかぬうちに勉強が目的になっていきます。
ここから少し記憶について説明します。まず憶える過程、これを【記銘】といいます。それを憶えておくことを【保持】、必要なときに思い出す過程を【想起(再生)】といいます。記銘→保持→想起の順です。
そして記憶は短期記憶と長期記憶に分類されます。短期記憶というのは数秒から数分程度の記憶で、短期記憶に留めておくことができるのは同時に平均7個ほどといわれており、何度も反復して記憶した内容を確認することで数十秒以上憶えておくことが可能となります。
一方、長期記憶は数年にわたって憶えていることができます。この長期記憶は性質の違いからいくつかに区別されています。特定の日時や場所と関連した個人的記憶に関する記憶はエピソード記憶。反対に、特定の日時や場所と無関係な記憶を意味記憶とよばれています。これらは長期記憶の宣言記憶として分類されています。長期記憶のうち、体で憶えた記憶などは手続き記憶に分類されます。
人は意味の無いものや興味の無いものは記憶しにくい傾向があります。そのために語呂合わせが活躍します。作りすぎると一体どこの何の語呂合わせなのかも分からなくなるので、個人的には興味をもつことが優先されるべきかなと感じます。
例えば経穴の横並びもただ第5胸椎棘突起下は神道、外方1寸5分は心兪、外方3寸は神堂…と憶えるよりかは、東洋医学概論で学習した心と神の関係性から考えると心兪の両隣に神の名が付く経穴があることにも納得できそうです。
実際に意味を理解しているか、興味(好意)があるか、イメージできているかは重要で、ここに何度も想起が加わることで長期的に記憶を保持できるようになります。
この記憶や睡眠の話は講談社さんのブルーバックス『脳の教科書』を参考にしています。解剖生理のこのあたりが苦手なんだよなという方はぜひ読んでみてください。
STEP2 国家試験の構成を理解する
自分がこれから受験する試験の構成を理解しているというのは、何も知らずがむしゃらに立ち向かうよりも有利に対策を立てられるようになります。
鍼灸の国家試験は【はり師】【きゅう師】という2つの国家試験です。
はり師きゅう師国家試験には共通した問題があります。(以下、共通問題)
医療概論、関係法規、公衆衛生、解剖学、生理学、病理学、臨床医学総論・各論、リハビリテーション、東洋医学概論、経絡経穴概論、東洋医学臨床論の12教科が共通問題となります。
ここにはり師受験者は、はり理論。きゅう師受験者はきゅう理論がそれぞれ加わり、全13科目を受験することになります。
これを午前と午後に分けていきます。午前科目は医療概論、公衆衛生学、関係法規、解剖学、生理学、病理学、臨床医学総論・各論、リハビリテーション医学。午後科目は東洋医学概論、経絡経穴概論、東洋医学臨床論、はりきゅう理論となります。
そして午前と午後にはそれぞれ総合問題があります。総合問題はだいたいが症例問題で、それに設問が2つあるパターンがほとんどです。
STEP3 現在地点を把握する
STEP1では記憶には意味の理解や具体的なイメージ、さらに反復した想起が重要であることを、STEP2では国家試験の構成についてをそれぞれ説明してきました。
このSTEP3で現在地点を把握し、合格ラインを突破するにはどうすれば良いかを具体的に説明していきます。
まず、先程説明した国家試験の構成に配点を割り当ててみましょう。
合格には6割以上が必要となるため合計ではり、きゅうどちらも102点以上をとらなくてはいけません。当たり前ではありますが、各教科6割以上を取れば合計点数も6割以上となります。
午前が90問、午後が80問の構成ですが、午前が60点にどれほど近いかがポイントだと考えています。これについては以前書いた記事(タクソノミー)でも紹介しましたが、午後の問題はより複雑な傾向があるためできれば午前の科目で多めに点数が取れた方が良いと感じます。なのでもし午前科目が40点〜50点台なのであれば、午前科目を中心に対策を立てると良いでしょう。
以前書いたタクソノミーについての記事はこちら。
①どの科目のミスを、どの科目でカバーしているかを知る
ある科目が6割に達していないのであれば、他の科目で不足分を取らないといけなくなります。これは配点に応じて変化していきます。
現在どの科目が6割に達していないのかを理解し、早い段階でそうした科目を6割にする必要があります。「まず何から手をつけるべきか。」と聞かれれば、間違いなくこうした6割未満の科目であり、反対に6割を毎回超えているような科目は強みとなります。
②科目を章ごとに対策をする
「でもこの科目は、前回の模試では6割を超えていて、今回は4割だったんです。」というのもあると思います。ではなぜ前回は6割を超えて、今回は6割に届かなかったのか。恐らくこうした事態は出題パターンの違いによって生じるものであり、章ごとの対策である程度防ぐことができると考えています。
例えば解剖生理学でいえば、【人体の構成】【運動器系】【神経系】【感覚器系】【循環系】【血液と免疫】【呼吸器系】【消化器系と代謝・栄養】【泌尿器系】【内分泌系と体温】【生殖・身体の加齢変化】【局所解剖】で、全部で12章の構成となっています。
試験を受けたら、どの設問がどの章に対応しているかを確認して正答率を見てみると、改めて自身の理解度にバラつきがあることに気付けるかもしれません。もし毎回同じ章で正答率が下がっているのであれば、そこを集中的に対策してみてください。
③出題パターンごとに対策をする
先ほどタクソノミー分類を紹介しましたが、試験の後半はタクソノミーⅡ型での出題が多く、設問と選択肢を交互に見直さなくてはならず、そのため時間も多くかかります。
それだけでなく誤った想起や理解をしてしまうとケアレスミスが増える原因ともなります。もしこうした出題パターンで点数が取りにくいのであれば、タクソノミーⅠ型の問題などでも「もしもこの設問にこういったパターンもあったら…」と日頃から考える癖をつけておくと良いかもしれません。
④単語を見て、それがなにかを説明できるようにする
まずこの4択問題を解いてみてください。
続いて、この4択問題を解いてみてください。
1つ目はより国家試験に近いものです。恐らく【酸塩基平衡にかかわるもの】を知っていれば、あまり難しくないかもしれません。
しかし2つ目は【酸塩基平衡がそもそも何か】を知らなくては解けません。
単語を見て、問題としていま何を問われているのかが分かる。この単語は何を意味しているのかが説明できる。というのは、4択を正しく選択するうえでも重要です。
日常的に分からない単語はすぐ調べる習慣を身につけられるといいですね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
編集後記的な
本来はXで「国家試験まで残り100日」というポストと同時に公開する予定の記事でしたが、第2子の出産でバタバタしたり、仕事が忙しかったりなどの理由で遅れての完成となりました。
国家試験に向けて徐々に不安が募る時期に、学生さんの背中を押すような記事を書こうと思いながら作り始めました。が、STEP1で記憶といった脳の機能を入れた影響で、本当に伝えたかったことがSTEP3となってしまい、つくづく文才や構成力の無さを痛感しています。
文の出来は悪いのですが、作成した見出しも挿絵も出来を結構気に入っています。多くの方に読んでいただき、長く読まれる記事になってほしいなと思いつつ、出題基準が変わったらまた作り直さなきゃいけないのかと、今から既にそんなことばかり考えています。