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足関節の安定性

足関節の構造

足関節は下腿(かたい)と呼ばれる脛骨・腓骨と距骨から構成されています。
距腿(きょたい)関節とも呼ばれます。
足関節は距骨が距腿関節窩にはまり込んでいる構造をしていて、荷重時の関節安定性の多くは骨に依存しています。
距腿関節によって足首を上げる背屈(はいくつ)や下げる底屈(ていくつ)の動作ができています。

距骨とその下にある踵骨から構成される距骨下(きょこつか)関節は、距骨の凹面と踵骨の凸面が適合することで、足首を内側・外側に曲げたり捻ったりする動きを担っています。
距腿関節と距骨下関節が動き合うことで、足首を回すなど複雑な動作を安定して行うことができます。

・軟骨
脛骨と距骨、腓骨の3つの骨の表面は弾力のある軟骨で覆われています。

軟骨はコラーゲン(繊維組織)、水、プロテオグリカン(糖たんぱく質)で出来ている保護組織のことです。
関節は、軟骨どうしが向き合った状態で動きます。
この軟骨の間に関節液が入ると、アイススケートのように摩擦のない状態で動きます。この作用で軟骨はすり切れないようになっているのです。

・靭帯
足関節は複数の骨が組み合わさっています。
グラグラしないよう補助的な役割をしているのが靭帯です。
内側は三角靭帯(脛骨と距骨・踵骨・舟状骨)
外側は前・後距腓靭帯(腓骨と距骨)や前・後脛腓靭帯(脛骨と腓骨)、踵腓靱帯(脛骨と踵骨)がそれぞれの骨間を繋いでいます。

足首が不安定に感じる時はこの中の組織に何かしらの問題があるかもしれません。

足関節不安定症とは

足首の関節が正常な安定性を欠き、不安定な状態が続く状態をいいます。
関節が必要以上に動いてしまうことが多く、日常生活や運動中に「ぐらつき」や「不安感」を引き起こします。

靭帯の損傷や筋力低下が主な原因とされ、適切な治療やリハビリを受けないと、症状が慢性化しやすい場合もあります。
また、足関節不安定症は、症状が経過するにつれて他の足や身体全体に対する別の症状を招く場合もあります。
例えば、膝や股関節への過度な負荷、生体力学的なバランスの崩れによる姿勢異常、筋肉の緊張、関節の変形など。

足関節が不安定になる原因は多岐にわたりますが、最も一般的なのは靭帯の損傷や反復性の捻挫です。
特定の怪我が原因となって靭帯が伸びたり切れたりすることで、足首の安定感が失われます。

・靭帯損傷
捻挫や過剰な動作が靭帯に影響を与え、機能低下や弱体化を引き起こす。
・筋力低下
リハビリ不足や運動不足によって足首周囲の筋肉が弱まり、不安定感を助長する。

靭帯損傷や捻挫の影響

足関節不安定症の主な原因の一つが靭帯損傷および捻挫による影響です。
足首の靭帯は、骨同士を結びつけて足関節の安定性を保つ役割を担っています。
しかし、捻挫や靭帯の損傷が繰り返されると、靭帯の機能が低下し、関節の動きを正常な範囲で維持することが難しくなるのです。

結果、歩行中や運動中に足首のぐらつきや不安定感を感じることが増えてき
ます。

一度の捻挫でも、軽症で放置したり、十分な治療を受けなかった場合は、靭帯が完全に治癒せず、慢性的な不安定状態に陥ることもあります。
このような場合、再発の可能性が高まり、捻挫の頻度が増加します。これを反復性捻挫と呼びます。

筋力低下

足関節周囲の筋肉は、靭帯とともに関節の安定性を保つ重要な役割を担っています。特に、筋力の低下が足首の不安定感の主な要因の一つとなり得ます。

足関節を支える筋肉が弱くなると、動作時に足首を正しい位置で制御するのが困難になります。
代表的な筋肉としてふくらはぎの腓腹筋やヒラメ筋、前脛骨筋が挙げられます。
これらの筋力が低下すると、歩行や運動中にぐらつきや痛みを引き起こしやすくなります。

筋力の低下は主に以下の場合に起こります。

・運動不足:日常的な運動量が不足して筋力が弱まる。
・加齢:年齢とともに筋肉量が自然に減少。
・不十分なリハビリ:捻挫や怪我の後に適切なリハビリを行わない場合。

また、スポーツや日常的なトレーニングにおいてフォームが不適切だと、特定の筋肉が過剰に使われたり逆に使われなかったりしてバランスが崩れ、筋力低下につながる恐れがあります。
筋力を適切に維持するためには、ふくらはぎのストレッチや足指のトレーニングなどを常日頃から取り入れることが大切です。

骨異常、軟骨の異常
足関節不安定症の重要な原因として骨や軟骨の異常がひとつ挙げられます。
足首の骨や軟骨には体重を支えつつ滑らかに動作ができるように調整する役割がありますが、摩耗や変形が生じるとその機能が損なわれ、不安定感や痛みの原因となることも。

具体的には

・変形性足関節症:関節軟骨がすり減り、関節が正常に動作しなくなる。
・骨棘の形成:骨の異常な突起が関節の動きを妨げたり、痛みの原因になる。
・骨折後の癒合不全:骨折が完全に治癒しないことで動作が不安定になる。

これらの問題がある場合、保存療法のみでは不十分で、医師による診断や手術療法が必要になるケースもあります。

足関節不安定症は、日常生活やスポーツによる過剰な負担が蓄積することでも発生する場合もあります。
ランニング、バスケットボール、サッカーなど足首が頻繁に使用されるスポーツでは、足関節への持続的な負担や繰り返しの圧力から組織が損傷するリスクがあります。
また、日常生活においても長時間の立ち仕事や不適切な靴の使用(例: ハイヒールや薄い靴底など)が足関節に過剰なストレスを与えることがあります。
このような習慣が続くと、靭帯や筋肉、骨に影響を及ぼし、最終的に不安定感を引き起こしてしまいます。

症状

・ぐらつき
最も特徴的な症状の一つが「足関節のぐらつきや安定感の欠如」です。
特に、平地歩行だけでなく、不安定な路面や階段、一段下がる動作などでぐらつき、転倒しそうになることがあります。
この症状は靭帯の損傷や筋力低下、および神経フィードバックの機能不全が原因で生じることが多いです。
例えば、長時間の立位や歩行が続いた後に、足首周辺に疲労感を覚えやすいだったり、急な方向転換が難しいと感じる場合は、このぐらつきの症状が関連している可能性があります。
また、この症状は放置することで悪化する場合があるため、適切な支えを補助する器具(サポーターなど)やリハビリが必要です。

・頻繁な捻挫
足関節不安定症の方によく見られるのが”頻繁な足首の捻挫”です。

一度足関節を捻ってしまうと靭帯が伸びたり損傷しやすくなり、その後の安定性が低下してさらに捻挫を繰り返すという悪循環に陥る場合もあります。

特に、スポーツ活動中や不安定な路面を歩行しているときに、些細な動作で容易に捻挫する場合は、足関節不安定症を疑う必要があります。
医療現場では、こうした反復的な外傷を「慢性的足関節不安定症」として診断するケースも多いです。適切な診断と治療が行われない場合、足首の靭帯がさらなる損傷を受けるだけでなく、関節の軟骨が徐々に擦り減り変形性足関節症に繋がる恐れもあるので注意が必要です。

・歩行時の違和感など
足関節不安定症では歩行時や立ち上がる際に足首周辺の違和感や痛みが出る場合があります。
この痛みは、主に靭帯損傷に伴う炎症、または足関節内の組織(関節包、靭帯、軟骨など)が圧迫されて生じるものです。

特定の動作や姿勢を取ると痛むという場合もあり、痛む箇所や痛みの程度は人によって異なります。例えば、階段を昇降しているときや急いでいる最中に足関節に鋭い痛みが走ることや、長時間同じ姿勢を取った後に歩き出す際に耐え難い違和感を覚える場合もあります。
このような症状が慢性化すると、関節内部の組織が炎症を起こし、さらに関節可動域が制限されるリスクがあります。

・運動時の不調
スポーツやアクティブな活動時に、顕著な問題となるのが足首がうまく動かず、制御できない感覚です。これは靭帯や筋肉の支えが低下していることや、可動域が狭まっていることに起因します。
例えば、
サッカーでボールを蹴ろうとした際に思った方向へ足を運ぶのが難しい
ランニング時にしっかり地面を蹴れない
などは、この症状が関連している可能性があります。

さらに、意図しない方向に足首が動いてしまいパフォーマンスが低下するだけでなく、捻挫や二次的な怪我を引き起こすケースも起こりえます。

リハビリと筋力トレーニング

保存療法の中心となるのはリハビリと筋力トレーニングです。
足関節不安定症では、靭帯の損傷や筋力の低下が原因となるため、関節を支える筋肉の強化が必須と言えます。

・前脛骨筋:足首の前面を支える筋肉で、つま先を上げる動作などに関与
・後脛骨筋:内側の安定性を確保し、アーチを支える重要な筋肉
・腓腹筋とヒラメ筋:ふくらはぎの主要な筋肉で、歩行時の推進力に関与

チューブトレーニング:足関節周辺の筋力を強化  週2~3回程度
片脚スクワット:下肢全体の安定性向上  週3回程度
バランスボードエクササイズ:足関節の感覚や安定性を向上  毎日5~10分程度

トレーニングでは、無理に負荷をかけすぎないよう注意しましょう。

足関節のストレッチと強化
・足首回旋運動
関節の柔軟性を向上。
椅子に浅く腰掛け、片足を持ち上げ、つま先で円を描くように動かす。
ちゃんと円を書いてね。
一方向に10回ずつ行う。
・ふくらはぎストレッチ
下肢全体の筋肉を伸ばし柔軟性を高める。
壁に手をつき、片足を後ろに引いてかかとを床につけた状態で身体を前に倒す。
左右それぞれ30秒キープ。
・片足バランス保持
足首の安定性とバランス感覚の向上
片足で立ち、もう一方の足を床から数センチ離す。
最初は10秒ほど支えを使用しながら行い、慣れてきたら支えなしで30秒を目標に。
・チューブトレーニング
周辺筋肉の強化。
トレーニング用チューブを足関節にかけて、足を外側や内側に動かす。
各方向で10回繰り返す。

週に3~4回を目安に続けることで、足関節の健康を維持することが期待できます。

日常生活で気をつけること

日常生活でも無意識的に足関節にかかる負担を減らすことが大切です。
ポイントは日常生活の中でも心がけること!

・無理のない靴の選択:硬すぎる靴底やヒールの高い靴は避け、足にフィットする快適な靴を選ぶ。
・足元に配慮した路面選び:凹凸のある路面や濡れた地面を歩く際は注意し、転倒や捻挫を防ぐ意識を持つ。
・日常的な疲労管理:過度な負担が続くと、足関節周りの筋肉が疲労しやすくなるため、適切な休息を取る。
・運動の前後のウォームアップとクールダウン:準備運動やストレッチを欠かさないことで、足関節にかかる負荷を軽減する。



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