東洋医学でみる”めまい”
11月〜12月にかけて、めまいで来院される患者さんが多かったのでコラムを書いてみます。
私自身も22歳くらいの時に難聴とめまいなどの症状で1年ほどお茶の水にある神尾記念病院に通院していました。
服薬だけではなかなか改善せず、当時はまだ鍼灸の学校に通っていたので週に何度か学校の先生と職場の先生にお願いして鍼灸治療を受けていたことがあります。
治るまでは症状を繰り返すことが多かったし良くなるまでは時間もかかる場合があるので、自分自身でも症状を把握して長い目で焦らず向き合いましょう。
めまいの種類
めまいには大きく分けて、
・回転性めまい
・浮動性あるいは動揺性のめまい
・失神や眼前暗黒感(立ち眩み)を伴うめまい
の3つの種類があります。
・回転性のめまい
天井がグルグル回るような感覚に陥るめまいです。
吐き気や嘔吐などの症状も伴うこともあります。
片側の内耳や前庭神経の病気が原因になっていることが多く、脳幹や小脳などの中枢神経の病気の症状としても見られることがあります。
・浮動性あるいは動揺性のめまい
自分がふわふわと宙に浮いているような感覚に陥ります。
前庭神経の障害が両側に起こった場合や片側のみの障害で比較的症状が軽い場合、または回転性のめまいの回復期にもみられます。
また、長時間のPC作業やスマホを触るなどによって眼精疲労や肩こり、頭痛、VDT症候群でも起こることがあります。
・立ちくらみ等を伴うめまい
目の前が急に暗くなったり気が遠くなったりするようなめまいで、ひどい場合には失神したり意識を失ったりすることもあります。
立ち眩みや脳貧血もこのめまいのに含まれます。
不整脈や低血圧などの心臓や血管系の病気や貧血・心因反応などが原因となっていることが多いのがこのめまいです。
他にも、急に体を動かした後に突然強い回転性のめまいに襲われる良性発作性頭位めまい症などがあります。
特に回転性のめまいの場合は症状が悪化するので慌てずに安静にすることが必要です。
ただし、小脳出血や脳梗塞、不整脈による脳貧血が疑われる場合には、早急にかかりつけ医、もしくわ専門医を受診するようにしましょう。
めまいの原因は水?
東洋医学では、”気(き)・血(けつ)・水(すい)”が身体を作る重要な3要素と考えます。
”水”は陰(いん)または津液(しんえき)とも呼ばれていて、血以外のすべての体液を意味します。
汗・唾液・リンパ液はすべて”水”に含まれます。
水は全身を潤し冷やす作用があります。
水が足りないとほてりや、肌・粘膜の乾燥を引き起こします。
とくに肺が潤っていない場合は空咳を生じやすく、水が多く巡りが悪いとむくみ・めまいの症状が現れます。
水は十分な気・血から生まれるため、気・血が不足すると水が不足し、巡りが悪いと水の巡りも悪くなります。
東洋医学において、”水”(すい)はむくみ・ほてり・めまい・空咳などに関わる重要なものとされているのです。
”陰虚”と言われる体質
東洋医学において、水が不足している状態を”陰虚”といいます。
身体を冷やす水(陰)が不足して身体を温めるエネルギーが過剰になり、ほてって火のように旺盛になる状態を陰虚火旺(いんきょかおう)といいます。
この状態は加齢や更年期においてよくみられますが、更年期に限らず陰虚ならなりうる状態です。
陰虚の中でも、とくに五臓の腎の水が不足する状態を腎陰虚と言います。
腎陰虚は腎虚の一種で更年期や加齢によって引き起こされます。
過労・寝不足・加齢などが原因となり、様々な症状が現れます。
すべてが当てはまらなくても、いくつか当てはまれば陰虚の特徴を持っていると考えていいでしょう。
陰虚に見られる体質
・頬が赤く熱く感じる
・のぼせやすく暑がり
・手足の裏が熱い
・冷たい飲食物が好き
・寝汗をかく
・口の中や肌が乾く
・舌が赤く乾いている
・舌苔が少ないか、ない
陰虚を改善するには
陰虚の人にとって、コーヒーはあまりよくありません。
コーヒーは、利尿作用があるため、本来不足している水を身体から出してしまう作用があるのです。
一方、緑茶や紅茶は水を補いつつ余分な水を出す作用があるので、陰虚にもおすすめです。
蜂蜜、メープルシロップといった食材は、水を補ったり体を潤したりするので、紅茶に入れて飲むといいかも。
東洋医学には、酸甘化陰(さんかんかいん)という、酸味と甘味を合わせてとると陰(水)が生まれるという考え方もあります。
すっぱい味と甘い味を合わせた、果物の砂糖漬けや果物の蜂蜜漬け、または果物単体も陰を補うのにいい食べ物とされています。
水の不足で考えましたが、めまいの原因は東洋医学で考えても、体質、タイプと何種類もみちすじが考えられます。
めまいは、リハビリや漢方薬の服用、鍼灸治療等によって、少しずつ症状は改善してくると思います。
しかし、完全にゼロにすることはなかなか難しく、発作が起こることもあるかもしれません。
めまいは、睡眠不足や体調不良、低気圧、疲れやストレスなどでも悪化することがわかっています。
めまいの悪化因子になるものを知って、行動することが大切です。
意識しておくことで、日頃から睡眠不足にならないように気をつけたり、ストレスがたまらないようにする、低気圧の接近している際は無理をしないなどの対策を取るようにするようにするといいでしょう。