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余韻に浸る根源的なリアル
存在しない色で描かれた
記憶の化石が溶けてゆく残響が、
今、ふとした隙間に沈む。
一瞬の静寂に揺らめくもの
それは既に過ぎ去った瞬間の名残であり、
手に掴むことさえできない無形の存在。
意識の片隅にひそむそれは、
消え去るでもなく、
形を変えて漂い続ける。
人は、何かを経験したあと、
その「余韻」に囚われる。
時間の奥底に沈む真実の一端に
触れたかのように。
根源に触れるこの感覚は、
個人の記憶と深く結びつき、
経験の輪郭を曖昧にする。
この余韻に隠された「リアル」とは
掴んだと思えばすり抜け、
追いかけるほど遠ざかる。
それは形のない存在でありながら、
私たちの感覚の中に確かに響く。
まるで、触れ得ぬ魂の影が
そこに在るかのように
言葉にはできない
確かに感じる、存在の反映。
その根源的な、我々が
「いま」という時間を超え、
かつての自分に出会う時にこそ
浮かび上がるもの。
過ぎ去った風景の向こうに見えるのは、
もはや答えは無く、
問いだけがひとつ、そこに在る。
遠い過去から引きずられた記憶と、
未来から差し込む微かな予感が、
空間をまたいで交わり合う、曖昧な境界で。
私たちはその境界に触れられぬまま、
ただ立ち尽くし、影のうねりに耳を傾ける。
存在すること、それ自体が
一つの選択であり、
一つの謎でもある。
目の前にあるものは常に移ろいゆき、
一瞬にして崩れ去る刹那の映像。
その崩壊の瞬間に、
全ての形が溶けて失われる前に、
ほんの一瞬だけ、姿を現す何か。
私たちの理解を超えた、透明な構造。
感情の風がその隙間を吹き抜けるたび、
過去の影と未来の兆しが
触れ合い、滲むように重なる。
そして、その余韻に浸るとき、
私たちは初めて気づく。
根源的なリアルとは、形あるものでも
確固たるものでもなく、
むしろ、曖昧に揺れ動く一抹の印象、
心に残る柔らかな
軌跡に過ぎないことを。
それは静かに、けれど確かに、
存在し続ける。
立ち上る霧のように
意識は揺らめき、記憶は溶け出す。
時の流れは砂時計の細い首を通り抜けながら
永遠という幻想を飲み込む。
光の粒子が網膜を打つ瞬間
その衝撃は既に過去となり
現在という幻は未来への
期待の中に落ちてゆく。
鏡に映る自己は記憶という
揺らめく水面に映った幻想の集積。
指先で触れる実在の感触
それすらも脳が紡ぎ出す
電気信号の存在の周波数。
真実は常に言葉の向こう側で
私たちを見つめている。
余韻だけが確かな存在として
静かに心を満たしてゆく。
それは過去でも現在でもない
永遠の一瞬という矛盾した実在。
私たちはこの根源的なリアルの中で
永遠に溶け続ける束の間の存在。
根源を探るたびに、
触れるのは揺るぎない不可視の網。
見えるものは限りなく薄く、
触れた瞬間に消えゆく儚さを携えて、
指の隙間から零れるように在り続ける。
記憶は幻、現実は泡沫、
形なき存在が織りなす繊細な繋がり。
けれど、その繋がりこそが、
我らの心の琴線を振るわせ、
余韻に彩られた世界を創り上げる。
この世界は、消えゆく一瞬の寄せ集め、
絶え間なく変わり、
戻らない時間の連なり。
余韻の中に響く真実は、語られない。
語ることができないからこそ、
その沈黙の中に本質が宿る。
問いは響き、余韻は深く、
そしてその奥には
その静寂の波長が
冷めた現実の中に潜む。