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⑦本当に伝える・本当に聞く

〇皆さんこんにちは。ここでは初心者の方にも分かりやすく、順番に演技のことについて説明していきたいと思っています。演技の勉強をしたいという方はぜひご参考になさって下さい。
〇今回のテーマは「本当に伝える・本当に聞く」です。

ちゃんと伝えてる? ちゃんと聞いてる?

○私たち人間は日常生活の中で、当たり前のように人に話しをしたり、人の話を聞いたりしています。台本の中でも二人以上の登場人物が会話をして、相手に返事をしたり、時には言い争ったりする場面がたくさんでてきます。
〇普段やっていることですから、台本に従って役として会話をするのも自然にできてしまいそうですが、実はなかなか難しい一面があります。

自分自身がその場で語ることと、台本を読むことの違い

〇なぜなら、普段の私たちはその場その場で必要性があって生み出される言葉を語っているのに対し、台本を読む場合はあらかじめ言葉が書かれ、決まったセリフをしゃべらなければならないからです。
〇これは実は、演技の難しさを語る上で非常に大切なポイントです。設定としては、台本に描かれた登場人物は、初めてその場を生き、その瞬間に生まれた言葉を語っているはずなのに、それを演じる役者はあらかじめ台本を読んでいますから、何を語るのか、その先に何があってどうエンディングを迎えるのか、全部知っているのです。セリフを聞いている方の相手役だって、何を言われるか聞かなくてもあらかじめ全部知っている。
〇もともと知っていることを初めて体験するように演じる。これはなかなか難しいことですが、自然に見える演技をするためにはクリアしていかなければならない課題となります。

覚えていれば言えてしまう危険性

〇あらかじめ台本を読んでセリフを覚えていれば、なぜその言葉を口に出すのか理由も目的も分からなくても、とりあえず登場人物と同じセリフを語ることはできます相手役の人も、言われたセリフの意味をまったく理解していなかったとしても、なんなら聞いていなかったとしても、次に喋る自分のセリフを覚えてさえいれば、とりあえず自分のセリフをしゃべることができてしまいます。
〇そのおかげで例えば小さなお子さんでも、言葉の意味は分からなくてもセリフを覚え、幼稚園や保育園の発表会で難しいセリフをしゃべったり歌ったりできるわけですが、きちんと演技を勉強して嘘に見えない演技をしようと思う役者にとって、この「覚えていればとりあえず喋ることができる」というのは落とし穴になります。その瞬間その場に生きている登場人物としてひとつひとつの言葉を生み出すのは難しく大変なことなので、覚えたセリフをただそれらしく語るというかんたんな作業に逃げてしまいがちになるのです。
〇あらかじめ決められた段取りを覚えて、本番でそれをなぞる。台本に書かれたセリフを覚えて、本番でそれを言う。そういうお芝居では、セリフはかたちだけになってしまって、しゃべっている方もちゃんと相手に伝えていない、聞いている方もちゃんと聞いていない、ということになりがちです。ひどい場合は相手のセリフの最後だけ覚えておいて、それが聞こえたら反射的に自分の番だとセリフをしゃべり始めるという人もいます。相手がセリフを間違ったり、言うべきことをとばしてしまったりしてもおかまいなしに自分のセリフをしゃべって、まったくつじつまが合わない場面になってしまった、なんて経験はありませんか?

先を急がず、順番に伝えよう。ちゃんと聞こう!

〇初歩的な話しですが、役者にとって本気で相手に伝えようと思ってセリフを言えること、相手役のセリフを本気で聞けることはとても大切な能力です。ここでひとつ、お互いにしっかり伝え、聞く力を養う練習方法をご紹介します。

信頼関係と素直な感性が大切!

〇ここでは文章を使って演技についてお話ししているので、どうしても理論的なお話しが多くなりますが、役者の演技は「理論と感性」が両輪です。どちらが欠けても車は走りません。理論的に理解しつつ、感性を使って演技ができる役者になって下さい。
〇今回はまず二人組になって練習を行います。あとで使いますので、最近練習で使っている台本等(なければ何でも構わないので台本や原稿)を用意しておいて下さい。
〇第一に大切なのはお互いの信頼関係です。真剣にやっていることを不真面目に流されたり、ちゃかされたりすることは大変な苦痛になりますから、お互い真面目に、本気で練習に取り組むことを約束して確認し合いましょう。そうすることでお互い安心して、自分のデリケートな感性を相手に見せることができるようになります。

登場人物を演じる前に自分自身を語る

〇役者は台本に描かれた登場人物など、自分とは別の人間を演じるのが仕事ですが、それには「役作り」と言われる準備が必要になります。今回は伝える・聞くという初歩の練習なので、まずは他人である登場人物でなく、自分自身のことを語ってみましょう。自分のことなら準備しなくてもスラスラ説明できることがたくさんあるはずです。

①ではまず、「自分のことで相手がまだよく知らない話し」をひとつ選んでみて下さい。話すのが恥ずかしい話題、自分も思い出すのに時間がかかる話題はさけ、話す順番が自分でも分かりやすいものがよいと思います。

例:家からここまでの道順。今日朝起きてから出かけるまでに家でやったこと。得意な料理の作り方、など。

〇ウケを狙って面白い話題にする必要はありませんので、シンプルで分かりやすいものを選びましょう。

②ひとつ選んだら、(必要なら一度紙にメモするなどしてそれを見ながらでも構いません)それを相手が分かるように、なるべく分かりやすく順番に説明していって下さい。聞いている人は、それを聞き漏らさないように、一度で理解して内容を覚えるように努力して下さい。

③ひととおり聞き終わったら、お互いに話してくれたこと、聞いてくれたことに対して感謝し、お礼を言いましょう

④聞いていた人は話してくれた人に、その話題について、いろんな質問をしてみましょう。そのときどう思ったのか、どう感じたのか、どうしてそうしたのか等、人間に興味を持つことも役者にとって大切なことです。たくさん質問できることは、あとで役作りをする技術にもつながりますし、たくさん質問してもらえた人は、より詳しく自分の行動を意識するてがかりをもらえることになります。(質問されても答えたくないことは答えなくてOKです。)

⑤話してくれた内容について質問もして、詳しく情報を入手したところで、今度は聞いていた人が話してもらった内容を順番に説明してみましょう。テストではないので、語句や数字などを正確に記憶していなくても大丈夫です。とにかく相手が何を言っているかに興味を持ち、自分が受け取ったことをその場で思い返して口に出してみるという練習です。

⑥それが終わったら、今の体験を忘れてしまわないうちに、あらかじめ用意した台本や原稿を開き、今話していた人が聞いてくれていた人に対し、台本のセリフを読み聞かせてみて下さい。先ほど自分のことを話したように言えていますか? 聞いている人は、先ほど聞いたように本気で聞けていますか? その違いを味わってみましょう。
☆時間があったら、話す方、聞く方を交代してやってみましょう!

他人事ではなく自分事として 自分の言葉として

〇どうでしたか? 他人のセリフや原稿を読むことと、自分のことを話すことの違いを感じることはできましたか? まずはその違いが分かることが第一歩です。その違いが分かると、セリフをしゃべっていて、それが自分のこととして言えているのか、そうでないのかが自覚できるようになってきます。最終的には、台本に描かれた登場人物のすべてのセリフを、自分のことを話すのと同じように、自分のこととして話せるようになるのが目標です。聞く場合も、その人物として毎回本気で相手の言葉を聞くことが必要となります。

〇今回は「本当に伝える・本当に聞く」ということをテーマにお話ししてみました。仲間やお友達と練習をするときは、信頼関係が第一です。お互いを大切に大事にしながら、よい環境をつくって練習に取り組みましょう。
〇演技について学ぶべきことはたくさんあります。今後も少しずつだんだん情報をお伝えしていきたいと思っておりますので、焦らずリラックスしながらお読みいただき、ご参考にしていただけたらと思います。ご質問等ありましたらお気軽にご連絡下さい。

※情報はどなたでもお読みになれるよう無料公開させていただいておりますが、無断での転載や引用等はご遠慮下さい。


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